「――――は〜・・・・今日も雨かあ」
雨にキッスの花束を
部屋の窓から臨む景色は、灰色一色。
更には天から降ってくる、大量の雫達のオマケつき。
「まあ・・・・仕方ねえよ。丁度今、梅雨時だし」
背後から聞き慣れた低音が、私の呟きに答えを返してくれた。
視線の位置を窓から、恋人へと移動させる。
ベットに横たわりながら、気だるそうに紫煙を吐く――――担任。
「でも・・・・こうも、雨続きだと。いい加減、外に出たくなりませんカ?」
「ん〜?まあ、オレは別に。どっちでも、良いけどね?」
どうでも良い様な口調ぶりに、思わず眉間に皺が寄った――――が。
次の台詞で、赤面状態に陥らされる羽目になる。
「可愛い恋人と一緒にいられるなら、それだけで十分。
部屋でも外でも、甘い時間が過ごせるなら――――どっちでも良いデス。先生は」
短くなった煙草を灰皿に押し付け、両腕を伸ばして背伸びすると。
横たえていた身体を起こし、四散されていた服に手を伸ばした。
「・・・・実は、タラシ?」
両手で頬を押さえて、顔が緩みそうになるのを必死で堪える。
あんな台詞言われただけで、嬉しさが込み上げて来るなんて。
どんだけ私は、この男に――――骨抜き状態なんだろう?
「ば〜か。こんな、こっ恥ずかしい台詞。お前以外に、言えるかっての」
「あれえ?柄にも無く、両耳赤いですヨ?」
さっきのお返しに―――――ちょこっと、からかってやったら。
「余計な事は、言わんで良いの!」
そう言って私の頭を、軽く小突いた。
「飲みモン、持ってくる。コーヒーで良いか?」
「うん」と、だけ返事して。
室内の換気をしようと、少しだけ窓を開ける。
開けた隙間に両手を差し出せば、掌に落ちてくる冷たくて透明な複数の雫達。
結構それが気持ち良くて、銀髪の恋人が戻って来るまで。
その、体制でいたら――――。
「こら!何してやがんだ?」と、頭上から声が降りてくる。
「両手を、雨に当ててたノ。結構、気持ちが良いですヨ」
「――――ったく。しょうもねえ事、しやがって」
二つのマグをテーブルに置き、私の傍まで寄って来た。
室内には先程とは違った、コーヒーの良い香りが漂って来る。
いつの間にか恋人の手には、タオルが握られており。
「ほれ、手を出せ」と命令して来た。
「え〜?もうちょっと、このままでいたい」
「いたい〜じゃないの!掌どころか、腕にまで雨粒が降ってきてんじゃねえか。
あ〜あ・・・・シャツまで、腕の部分が濡れちまってる」
無理矢理両手を、引き戻し――――眼前の男は軽く溜息を吐く。
「だって、気持ち良かったんだモン」
「まあね?あんなに熱く、燃えた後だから?身体を冷やしたい気持ちは、良く分かるけどね?」
銀髪男の言葉に、再度顔が赤面状態になる。
そんな私を見て、男は唇の片端を――――意地悪く上げた。
「―――――ふむ。タオルで拭くよりも――――」
突然禁断の恋人は、そう言うと・・・・私の手を取り。
口元へと・・・・持って行く。
指を咥えたと思ったら――――男の舌先が、私の指をなぞり始めた。
「!?」
「こっちの方が、良いな。確かにお前の言う通り、冷たくて――――」
舌先が私の指を1本・1本――――水滴を取り除くかの様に蠢いている。
そんな感覚に、背筋が粟立った。
両肩を竦め、手を振りほどこうにも・・・・解けない。
「―――――っ」
「・・・・・甘い」
指・・・・・手の甲・・・・そして――――腕と。
銀髪男の赤い舌が、雫を拭き取る様に舐め上げていく。
「・・・・・あっ」
「――――どした?神楽。あんなに、冷え切っていたのに。もう熱くなって来てるぞ?」
意地悪な質問に、私は唇を噛み締めながら返答する。
「・・・・っ!先生の・・・・所為デショ!」
「まだ手と腕だけなのに?感じやすいねえ?神楽ちゃんは。銀八さんもび〜っくり」
―――――それこそ!誰の所為で、こうなったと思ってるノ!?
からかい遊ばれてると感じた私は、勢い良く左手を男の口元から離し。
半開きにしていた窓を、全開にさせて。
今度は上半身、乗り出す形で――――雨に打たれた。
天上から降る冷たい透明な雫達は、容赦なく私の身体を濡らして行く。
この突飛な行動に、流石の男も慌てて。
「おい!こら!マジで何してんだ!?ずぶ濡れになんぞ!早く体を引っ込めろ!」
両肩を掴まれ、無理矢理に室内へと引き戻された――――が。
既に、後の祭りである。
頭から顔・・・・肩まで、先生に借りたワイシャツは。
雨に濡れて、びっしょりだ。
額から流れる雫は、頬のラインを辿り――――顎まで到達し。
自慢のストレートヘアの毛先からも、雫がぽたぽたと滴り落ちている。
急いでタオルで、雫を拭おうとした男の手を払い。
私は、してやったりの顔を浮かべて。
「―――――どうにかしてくれんデショ?さっきみたいに」
一瞬タオルを握ったまま、硬直状態だったが。
「・・・・それは、誘惑されてると。取って良いのかな?神楽君」
「――――どうかな?それは、銀ちゃん次第じゃないノ?」
さあ――――早く。
この冷え切った身体を、貴方の熱で暖めて。
恋人は唇の両端を上げて、優しい眼差しをこちらに向けると。
「――――了解。先程よりも、もっと――――熱い想いをさせてあげましょう?」
男の無骨な手が、濡れた私の頬に触れる。
――――同時に唇に、舞い降りた―――暖かな感触。
本当はネ?私は雨の日の方が、好きなのヨ。
銀ちゃんと、一緒に――――こうして。
長く――――甘い時間を、過ごせるから。
雨に濡れたこの身体に、キスの花達を咲かせてくれたら。
それらを束ねて、貴方にあげる。
※6500hit超え、真に有難うございました。
此処まで来れたもの、訪問して下さった皆様のお陰でございます。
日頃の感謝の気持ちを篭めて、3Z銀神の激甘小説を掲載させて頂きました。(自分でキリ番を踏んでしまったという事もありまして・・・・ORZ)
この物語の題名は、今井美樹さんが歌われている「雨にキッスの花束を」からお借りしました。
可愛いプロポーズの歌で、管理人も大好きな歌です。
9月月末までのフリー配布とさせて頂きますので、駄文ではございますが貰ってやろうじゃねえかと仰って下さる方は、どうぞお持ち帰り下さいませ。
ABOUTへ戻る