いつも どこでも
神楽ちゃんが、お父さんの星海坊主さんと。
この『万事屋 銀ちゃん』から、旅立ってから。
もう一ヶ月になろうとしている。
一週間前に、『万事屋』に届いた神楽ちゃんの手紙では。
元気そうに稼業に勤しんでる事や、未知の世界に触れた時の
感想などが書かれていた。
えいりあんはんたーとして、彼女は今もいろんな『惑星』を
駆け巡ってる事だろう。
反対に。
お江戸もかぶき町も、そして『万事屋』も。
何ら変わりない、日常を送っている。
・・・いや。変わった事が、一つだけ。
銀さんだ。
この前たまたま、見掛けてしまった
彼の行動。
僕と定春の前では、けしてそんな素振りは見せないけれど。
彼女から届いた手紙を、引出から取り出しては。
何度も視線を滑らせて、軽くため息をついて。
窓越しから、空を仰ぐ。
・・・・それの繰り返し。
彼女が旅立つ時。
笑顔を浮かべて、「行って来い」と背中を押した銀さん。
本当はちょっとだけ、顔が曇っていた事も。
実は知ってたけど。
ねえ、銀さん。
「うるせえのがいなくて、本当せいせいする」なんて、強がっているけど。
「うるさいのがいないと、落ち着かない」としか、僕には聞こえませんよ。
僕思うんですけど、多分神楽ちゃんは。
いつでも、どこにいても。
きっと『万事屋』の事を。
銀さんの事を。
脳裏に浮かべてると、思うんです。
だってそれだけ、彼女にとって
銀さんは『もの凄く大事な人』だから。
買い物袋を掲げて、『万事屋』に向かう道程。
僕は顔を青く晴れ渡った空に向けて。
「帰ってくるのを、待ってるよ。神楽ちゃん」
同じ思いを抱えている、銀髪の侍に代わって。
心地良く吹く風に、願いを込めて言葉を乗せた。
どうかこの言葉が、少しでも彼女に届きます様に。