A BLISS FORM

まれたばかりのお前を、この両腕に抱こうと。
一度深く呼吸をし、恐る恐る・・・腕を伸ばす。

そっと、優しく持ち上げて。

顔を覗き込めば、赤み帯びた皺くちゃな顔が。
今にも、泣き出しそうに。

―――猿みてえ」

思わず、笑みが毀れる。

『ズシリ』と。

腕に感じる重みが、とてつもなく愛しい。

「・・・初めましてだなあ」

オレ達の子供として、生まれて来てくれて。

・・・サンキュな。

お前はこれから、たくさんの。
『成長と思い出』と言う『宝』を。

オレとアイツに、与えてくれる。
この世で一番、『大切な存在』。

父親になるって知った時。
本当は。
自信が無かった。

大切なお前達を、この手で。
『護っていく』事が、出来んのかって。
考えた事もあった。

でも―――お前を、この腕に抱いたら。
そんな感情、全部吹き飛んじまったよ。

今、とても。
嬉しくて、幸せなんだ。

病院のベットで眠る、神楽に視線を移し。
子供を抱いたまま、起こさない様近づいて。

耳元に顔を寄せ、そっと言葉を述べた。

「有難うな。こんな素敵な『宝』を、授かってくれて」

額に、軽く唇を落とし。
腕の中にいる子供を、神楽の横に並べる。

「顔・・・そっくりでやんの」

噴出しそうになるのを、堪えて呟いたら。

神楽の・・・唇の両端が。
微かに、上がった様な気がした。


この胸に流れる、暖かな感情を。
何て呼ぼうか。


『至福の形』



※以前神楽ちゃん視点で、子供への思いを書いてみたので
今回は銀さん視点で、書いてみました。



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