TIME SLIP


頭上を仰げば、青空に浮かぶ複数の船体達。

地球と銀河系を結ぶ玄関、『ターミナル』を目掛けて飛来している。

あの場所から『万事屋』の一員だった娘を、見送ったのは大分前の事。

名を馳せる禿親父と共に、『地球』と言う狭い世界を飛び出し。

無限と未知なる世界、『銀河』へと旅立って行った。

愛用の番傘を携え、出会った頃とは違った大人びた笑みを浮かべ。

『行って来るネ』

――――と、その一言だけを残して。

大食いの居候がいなくなっても、春夏秋冬は訪れ。

街並は四季に従い、顔を変えては彩を添えた。

そう。

日々変わる事なく、時間だけは過ぎていく。

・・・・・アイツが、『此処』を後にして。

もう――――どれくらい、経ったんだろう?

両目を瞑れば、色褪せる事無く。

生活を共にしていた、少女の顔が瞼の裏に浮かんだ。

今離れているのが、嘘の様に。


足元には、地煙が濛々と湧いており。

そこからは今しがた仕留めた、自分よりも何倍も背丈のあるえいりあんが舌を出して気絶していた。

私が『えいりあんはんたー』として、パピーと一緒に旅してから。

幾度と無く、目にしている光景だ。

再び顔を上げて、掛けていたゴーグルを外す。

透明な壁に遮断されていた視界が、途端に開けた感じを覚える。

雲一つない、晴れ渡った空。

番傘からだと隠れて見えないが、おそらく天高く座する黄金色の珠がある筈。

この稼業についてから、目まぐるしい日々を過ごす事になったけど。

―――――決して、あの居心地の良かった場所を忘れる事は無い。

私がパピーと一緒に、『地球』を旅立つ日に。

銀髪の男は唇の両端を上げて、両腕を組みながら。

『行って来い』

――――――と、言ってくれた。

・・・・・私が、あの場所を後にして。

もう――――どれくらい、経ったんだろう?

両目を瞑れば、色褪せる事無く。

死んだ魚の様な目をした男の顔が、瞼の裏に浮かんだ。

今離れているのが、嘘の様に。



――――だけど。

お前の存在無しで、今此処にいる。

貴方の存在無しで、今此処にいる。

――――なのに。

こんなにも存在を、近くに感じるなんて。


―――――なあ?

  ――――――――ねえ?

お前も。

貴方も。

同じ事を感じて、いてくてるだろうか?

同じ事を感じて、いてくれてるアルカ?





どんなに月日が、経とうとも。

自身の胸に宿る炎を、決して消さぬ様に燃やし続け。

今日と言う日を、越えていく。



――――いつか、再び出逢う為に。



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