―――――だから、そんな軽々しく言うなって。
Don´t you say
真剣な面持ちで、2つの碧眼をこちらに向け。
容の良い唇から、二文字の言葉が飛び出して来る。
多分もう何千回、何万回と聞いた台詞だと思う。
――――でもオレは、それを敢えて軽く受け流している。
それが気に入らないのか、眼前の少女は両頬を思いきり膨らませるのだが。
――――仕方ねえだろ。
確かに、『好き』なんて言われりゃあ――――嬉しいモンは嬉しいさ。
年が離れていようが、何だろうがな。
しかも将来は間違いなく、美女の部類に入る美少女からの言葉ときてる。
正直、男冥利に尽きるってモンでしょ。
でもなあ?毎回毎回、言われ続けてると。
本当コイツ、意味分かってんのかな?って思う訳よ。
本来なら軽々しく、言える言葉じゃなくね?
ほら、良くあるだろ?「好き」の意味を、履き違えてるってヤツ。
つまりは、LIKEとLOVEの違い?
大分違ってくるだろ。意味合いが。
その他大勢を、ひっくるめての「好き」なのか。
異性としての、「好き」なのか。
・・・・って言っても。この酢昆布娘じゃあ――――区別、出来てない気がすんだよな。
兄貴や親父的な、「好き」だったら・・・・・それこそ、空笑いモンだろ。
それに『ガキじゃない』って、憤慨するけど。
オレだって、お前がいつまでも『ガキ』のままじゃないって理解してるさ。
14歳前後のまま、人生終わる訳じゃあるめえし。
1年・・・・また1年と――――年齢は重なっていく訳だ。
もし大人になっても、オレを想う気持ちが変わらないってんなら。
それこそ、お前の気持ち――――本物って事だよね?
その時はちゃあんと、受け入れ態勢作っておくから。
でもなあ?人の心は、移ろいやすいモノってな。
どんなにお前がオレを、好いていてくれたとしても。
数年後には、違う誰かを想ってるかも知れないんだよな。
あれ?何?何これ?このモヤモヤ感。
何かエライ、ムカムカするんだけど。
―――――そん時は・・・・どうすっかなあ・・・・・・オレ。
『逃がした魚は、大きい』って、言葉が確かあったっけ。
そう考えると、あまりコイツの言葉を受け流し過ぎるのも。
・・・・・問題?
まあ今この場で、考えてもしゃあないし。
そん時は、そん時って事で。
・・・・・最終的に、何が言いたいのかと言うとだ。
オレだろうが、オレ以外の野郎だろうが。
軽々しく、伝えるんじゃなく。
本番の時まで、その言葉は大事に取っておけって事。