エメラルドの弱み

 






「オレ―――――チャイナが、好きかも知れないんでさァ」

突如とんでも無い発言をしてくれた、黒い制服を着た年下の美青年。

茶を含もうとした瞬間に、んな事言ってくれちゃったモノだから。

お約束の如く、盛大に口から緑茶が吹き出された。

噴出の被害に遭わずに済んだ、右隣の青年は「あらあら」と他人事。

此処が室内でなく、良かったと思う。

パチンコで散財しまくったオレは、項垂れながら街中を歩いていたのだが。

突然、「あれ?旦那じゃねェですかィ?」と。

くされ縁の一人であると思われる、『真選組・一番隊組長』に声を掛けられたのだ。

どうも彼も『サボり』の口実を探していた様で、一緒に茶でもと誘われて。

何ら断る理由も無く、二つ返事でOKし。

三色団子を口に頬張り、程好い甘さを堪能しながら
――――茶で喉を潤そうとした・・・その時だった。

冒頭の言葉が、両耳に届いたのは。

「・・・・きゅ、急にどうしたのよ?沖田君」

咽るのを堪えながら、疑問を口にすれば。

「――――さあ?どうしたんでしょうねェ。自分でも分かりやせん」

何て返事が、戻って来て。

横目で彼を見やれば、冗談を言った風でも無いらしい。

ただいつものポーカーフェイスが、其処にはあった。

「・・・・言いたかった、だけなのかもなァ。誰かに」

顔を上空へ向けて、陽射しを浴びる。

色素の薄い髪が、光を受けて――――風に晒された。

「・・・・・・・・・」

『犬猿の仲』とされてる二人だが――――何処か、彼は。

神楽をそういう目で、見ていたんだと思う。

ただそれを認めたくなかったのか、気付かなかっただけなのか。

どちらにしろ、彼の爆弾発言は。

オレにとって、心臓を鷲掴みにされたくらいのショックを受けた。

――――まさか、沖田君の口から。

神楽の気持ちを、聞かされる事になるとは。

「・・・・・オレが、神楽に言ったら?どうすんの?」

どうにか平静を装いつつも、意地悪な質問をしてやったのだが。

この言葉に沖田君は、両肩を竦めて笑った。

「旦那は、そんな事しやせんよ」

これまた、はっきりと言ってくれちゃうなあ?おい。

行動を見透かされてる様で、正直面白くない。

しかもよりによって、己よりも年下の男にだ。

だが彼は唇の両端を上げて、更に言葉を続けた。

「恋敵・・・・になるかも、知れないってのに」

「おいおいおい、勘弁してくれよ。誰があんな、小娘に――――」

鼻で笑って、否定をしてみるものの。

沖田君は「でも」と、言葉を遮って来る。

「旦那も本当は、チャイナの事――――」

それ以降の台詞は、続けられる事は無かった。

オレが腰掛けていた身体を、立ち上がらせたから。

「団子、ごっそさん」

踵を返し右手を掲げて、帰路へと向かう為足を動かす。

彼が背中をじっと見続けているのを、ひしと感じたが。

敢えて気付かない振りをして、『万事屋』へと向かった。

己の気持ちを見抜かれてると知り、思わず苦笑いを浮かべる。

――――ああ、そうだよ。沖田君。

オレも、神楽の事――――憎からず思ってる。

・・・・・だが、この気持ちを。

神楽本人に言った事は、一度も無い。

アイツがオレに感じているのは、親愛や友愛と言った類の感情で。

恐らく『恋愛』を含んだ、愛情なんて持ってないと思う。

『雇い主』兼『保護者』。

それがオレと神楽を表す、ぴったりの言葉。

・・・・・実際、それでも良いかって思ってたんだ。

沖田君の言葉を、聞くまでは。

「――――参ったね、こりゃ」

今までの様には、いかないじゃないか。

「オレも――――出方を、考えっかなあ」

あんな風に感情を、ストレートに示すなんざ到底無理。

だが生憎一つ屋根の下にいて、共有時間もこちらに分がある。

沖田君からしてみれば、卑怯とも取られるかも知れないけど。

彼を相手に余裕ぶっかましていられる程、今のオレには無い。

沖田総悟と言う人間は、それだけ、『魅力』のある青年なのだから。

「ホント――――弱った」

三人の関係が、また新たに始まる。

 






※ドリカムの『エメラルドの弱み』の題名を、どう銀神で表そうかと。

少ない脳味噌で、捻りに捻ってみましたが。

どう転んでも、うまく書けませんでした(TT;)←おい。

銀→神←沖ですよね、完全に。

とりあえず、エメラルドじゃああああ!

と・・・・石言葉を流用したものの。『幸運・新たな始まり』※Wiki調べ。

失敗したなあ・・・・沖田さんファンの方、大変申し訳ありません。

この様な駄文に目を通して頂き、真に有難うございました。

 

 

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