「・・・・・オレの、愛しい人達が―――――」
「ん?どしたアル?銀ちゃん」
「物凄い勢いで、消えてく予感なんですケドおおおおお!?」
「自業自得ですよ。往生なさい」
Goodbye Darlin´
往生なさいって・・・・お前ね。どの面下げて、んな事言ってくれてんの?
ガキのてめえらには、分かんねえだろうがなあ!
博打ってのは、金銭だけの問題じゃねえんだよ!
『時の運』が味方について、初めて『大勝』という二文字が。
天から、授けられるのよ?この身に、降臨されんのよ?
パチンコで確変連続20回以上なんて、そうそう訪れるモンじゃねえの!
『うっわ〜・・・・これ、一生分の運使い切ったっぽいよね?』
――――って、思わされる程の。それはそれは、激ラッキー日で。
液晶画面に3つの数がゾロ目で揃う度に、パチンコ店の経営者が。
苦笑い&勘弁してくれよ的な表情で、こちらを拝んでくるんだよ。
それを軽く受け止めながらも、何とも言えぬ高揚感に包まれる『幸福感』。
既に同じ台に向かって、厠に行く以外に立つ事も無い。
ただ・・・・じぃっと、椅子に座って画面と睨めっこ。
しかも長時間、ハンドル握ってるから。
右手首なんて、「あれ?これ、腱鞘炎?」って言うくらいに痛いんだよ。
正直『万事屋』の依頼よりも、キツイんですよ。
でもね、何が悲しいかな。こんなツキ、もう二度と無いから。
『絞って、絞って――――絞りまくってやる!』
と言った心情が、湧き出てくるから・・・・途中で止めるなんて出来やしねえ。
途中で止めたなんてしたら、それこそ馬鹿だからね。
確変連続の台を捨てるなんて、オレには絶対無理ですからあ!
ドル箱は高々と詰まれ、しまいには置き場も無くなり。
数箱が別スペースへと移動されても、まだまだ銀玉はとめどなく溢れ出てくる。
この世の謳歌を堪能しきり、オレはパチンコ店を後にした。
・・・・・オレの、汗と涙の結晶が。
換金されて、20万近くの紙幣へと変貌される。
――――パチンコ万歳!運の神様、有難う!この御恩は、一生忘れません!!
いつも負け戦で、呪いの言葉を店へと吐き出していたが。
この日ばかりは、感謝感謝のオンパレード。
しょうがねえから、あいつ等にも・・・・たまには、奢ってやんかな。
・・・・・なんて。柄にも無く、殊勝な考えをしてしまったばかりに。
オレの愛する偉人の紙幣さん達は、悉く消えて行く運命になっている。
とんでもない、大食漢娘のお陰で。
「――――おまっ・・・・!ちょっ、神楽!てめえ!少しは、遠慮という言葉を学ばねえかあ!
この店の食材を、全て食い尽くすつもり!?他のお客様にも、ご迷惑だろうが!」
「うん?『奢ってやる』『遠慮しないで食え』と言ったのは、まごう事無く銀ちゃんアル。
私はその指示に、従ってるだけネ」
テーブルの上に並べられた料理を、休む暇も無く平らげていく。
この小さな身体に、何処へと吸収されているのか。
「従順過ぎなんだよ!この阿呆!少しは、新八を見習え!」
名前を呼ばれたメガネの少年は、苦笑いを浮かべ。
眼前に積まれていく皿を見つめながら、口を開いた。
「銀さん・・・・。神楽ちゃんの性格を考えた上で、言葉を選ぶべきでしたね」
「だって、普通。遠慮しないで食えと言われたって、遠慮するだろうが。
ていうか、するよね?常識のある、人間なら?」
「―――――神楽ちゃんは、『素直』ですから。特に、銀さんの言葉に対しては。疑う事もしませんし。
僕だったら嬉しいと同時に、『何を企んでるんだ?』と思うかも知れませんが」
そう思われても仕方無い性格をしてるのは、自分でも理解してますけども。
残念ながら企むも何も、脳裏に浮かんでませんでしたしね?
――――――コイツはコイツで、可愛くねえな・・・・・んっとに。
まあ・・・・純粋培養娘よりは、マシかも知れんが。
左隣で無我夢中に、食する少女を横目で見つつ。
肺に溜め込んでいた息を、盛大に外へと吐き出した。
「神楽君。少しは、オレに対しても『疑』の心を持ちなさい」
「銀ちゃんを、疑うの?どうして?」
「―――――お前ね。オレをどんだけ、信じてんだよ?
もしかしたら、嘘八百並べて。お前を窮地に、陥れるかも知れないぜ?」
そうだよ。心底信頼していた人間が、突如裏切る時だってあるんだから。
なんでもかんでも、『信用』すんな。
「んな事、する訳ねーヨ」
容の良い唇へと運ばれそうになった料理の欠片を、寸前でピタリと止めて。
オレの顔を、凝視する。
・・・・・否に、きっぱり言ってくれちゃってくれんね。
「どうして、そう思うの?」
新八がオレの気持ちを、代弁してくれている。
「だって、銀ちゃんだから」
そう答えると、大食漢娘は――――止めていた箸の手を、また動かす。
「・・・・・・・・」
神楽の言葉に、思わず唖然。
「これは――――裏切れませんね。銀さん、あんたの負けですよ」
・・・・・ああ、本当。そうだな。
オレの、負けだわ。
純粋無垢な少女の言葉は、流石にガツンと来ちゃいましたよ。
偉人さんが、描かれてる紙の束の消失如きで。
ぎゃあぎゃあ喚いてる自分の方が、余程悲しい奴だわ。
「神楽ぁ。新八ぃ。――――どんどん、食え」
「うきゃっほう!有難うアル!銀ちゃん!」
「・・・・いえ、僕はもう。十分頂いたんで」
「別に『裏』なんか、ねえぞ?」
「・・・・・いえ、そういう問題ではなく。
つうか、神楽ちゃんの食いっぷりを見てるだけで。もう腹いっぱいです」
「・・・・・オレも、吐きそうだわ」
さらば、愛しい偉人さん達。
でも、これに懲りず。またオレに会ってやって下さい。
※銀神でもなんでもねえな、これ。申し訳ありません!←本当にな。
いやこうも、悲哀の歌が続くと・・・・・そこから抜け出そうと、思わずこちらの路線になってしまいまして(T▽T)
パチンコで大勝しまくった銀さんが、神楽ちゃんと新八君に「幸せのお裾分け」をしていたら良いなあと。
でも、本当。確変20回以上なんて、マジで「奇跡」に等しいのですから。←ちなみに、経験者です。
「これ絶対、運使い切ったよね?」と、思わざるを得ない・・・・・・ORZ・・・・まあそんなもん、滅多にないんですがね。
それくらい、ヒートしちゃうんだよなあ・・・・・恐るべし、パチンコ。
この様な駄文に目を通して下さり、真に有難うございました。
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