常に考えない様にしていた、事柄が。
一気に・・・・頭の中へ、流れ込んで来ている。
それだけ今の私には、余裕が無いのだろうか。
――――そうかも、知れない。
定春を散歩に、連れて行こうとして。
万事屋を後にした、直ぐの出来事だった。
私が『ソレ』を、目撃したのは。
あの男にとって、長年住み続けた、『かぶき町』――――界隈には。
老若男女問わず・・・・・顔見知りもいれば、親しい連中だっている筈。
そんな事は、理解していたつもりだったのに。
―――――自分よりも、『大人』で『綺麗な女性』と。
対峙していた、銀髪男を視界に捉えてしまった瞬間。
愛犬のリードを引っ張り、その場から逃げ去る様に駆け出して。
胸中に渦巻くドス黒い感情が、沸々を湧き上がって来るのを感じた。
嫌だ。こんなの、私らしく無い。
銀ちゃんが他の女性と、笑顔を浮かべて話していたって。
――――別に、良いじゃねーカ。関係ない事だロ?いつもの事ヨ。
そう。ちっとも、私には関係ない事アル。
「・・・・・・・・・・」
『丁度良い、身長差』。
『大人の、男女』。
どちらとも・・・・自分には無い、『肩書き』。
早歩きしていた両足が、地面に吸い込まれる感覚で止まる。
突然歩みを止めた私を、不思議に思ったのか。
「クウン?」
数歩後で――――恐らく。首を僅かに傾げている、定春の声が届けられた。
嘘だ。全然、ちっとも良くなんかない。
ああやって、目の当たりにすると。
改めて、己という姿を再認識させられる。
どんだけ食べても、追いついてはくれない『身長』も。
どんだけ背伸びしても、『大人』になれない中身も。
「――――嫌になるアル・・・・・」
足掻いて、もがいても。
『坂田銀時』という男に、到底手は届きそうに無い。
銀ちゃんが、私と同じ世代だったら。
私が、銀ちゃんと同じ世代だったら。
お互いが、同性同士であったら。
こんな風に考えずに、済んだのかも知れないのに。
嫌な考えをする自分と、遭遇する羽目にならずに済んだのに。
―――――あの男を、好きになってしまったお陰で。
考えなくても良い様な事を、考えてしまう。
その場から、動けなくなってしまった私は。
無意識に両膝を折り、その上に額を乗せる。
背後から定春が、私に圧し掛かり――――更に顔は、両膝の間へと埋もれた。
「ワン」
心配気を含んだ声色に、思わず苦笑い。
「・・・・ん。何でも無いヨ。大丈夫ネ」
ホントは大丈夫じゃ、ないくせに。
強がりを言うのは、この口か。
『身長』。
『年齢』。
『人種』。
私にとっては――――どれも、障壁にしかなり得ない。
「何で・・・・こんなに、違っちゃったかナ」
自身の頭で出来た影に、雫が一つ毀れ落ちる。
水滴は地面に到達し、小さな円を描いて――――吸い込まれていった。
貴方を想う気持ちは、誰にも負けないのに
2人のDIFFIRENNCE
※本誌ではちっとも、こんな感じをさせない神楽ちゃんですけれども。
何処か頭の片隅で、考えているかもなあ・・・・・・・と思いまして。
いや、身長差があろうが!年齢差があろうが!人種が違おうが!神楽ちゃんは、銀さんの一番ですよ!←銀神ファン故です。
この様な駄文に目を通して下さり、真に有難うございました。
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