――――いつからだ?こんな感情が湧き上がるのは。



うれしい!たのしい!大好き!



黙っていりゃあ、年齢相応の可愛いさがあるのに。

口を開けば、毒を吐き――――辛辣な台詞を吐く。

常に『万事屋』のエンゲル係数を、脅かす存在で。

・・・・・正直。拾っちまった時は、本当・・・・後悔しましたよ。

でも共に一緒にいる時間が、長ければ長いほど不思議なモンで。

慣れと情が一緒になってくるし、プラス『親近感』ってヤツが生まれて来て。

アイツの初印象がだいぶ、和らげてしまった。

それどころか、一緒の空間にいるのが当然の様に。

酢昆布を、咀嚼する少女が傍にいる。

・・・・・現に、今もそうだ。

2つの碧眼をこちらに向けて、オレの名を口にして微笑む。

その表情に、胸中が何故かほんわりとなって。

思わず無意識に右腕が動き、天使の輪を放つ頭部に辿り着いた。

左右に撫でてやれば、嬉しそうに目を細めて両肩を竦める。

たったそれだけなのに、先程よりも両頬が緩むのは何故だろう。



認めたくないけど――――――『うれしい』



撫でていた手を、一回り小さな手が掴んだ。

掴まれた場所から、伝わって来る――――己とは違った体温。

何だか、熱く感じられて。

照れくささの後に、こっ恥ずかしさが残ってしまう。

20も余裕に過ぎた大の男が、初心な恋も知らない少年の様な反応って。

・・・・・有り得ねえよな、絶対。

何かすんごい・・・・・こんな自分に、鳥肌がたつんデスケド?

だけど――――どんな他愛無い事でも。

こいつと肩並んで時を過ごせば、一日なんてあっと言う間だ。

時間という概念なんざ、関係ない程くらい。



認めたくないけど―――――『たのしい』



・・・・あ〜あ。オレもどうか、しちまったんかね?

だってよ?常日頃、口から出てくる『クソガキ』によ?

この坂田銀時に駆け巡る全ての神経が、色恋も絶対知らなさそうなガキによ?

全部持ってかれちゃってるって、普通じゃねえよなあ。

ええ、そうですヨ。今この瞬間だって、心臓がバクバクいっちまって。

鼓膜が破れんじゃねえの?ってくらいに、うるさくてしょーもねえっすヨ。

悟られない様、深く腹式呼吸を繰り返すって―――――なんだよ、この体たらく。

本当良かった〜マジで。いつもやる気の感じられない、フインキ醸し出してて。

表に出すのは、マズイしね。大得意だからね、ポーカーフェイスは。

――――――だが。

『銀ちゃん!』と呼びながら、腹に抱きつくのはさ。お前ね、反則ってもんでショ。

オレの心臓を
デストロイしようとしてるんですかあああああああああああ?



「・・・・・はいはい」なんて、頭撫でて返事しながらやり過ごしつつも。

実際では額や背中には、大量の汗が吹き出て来る。

わあってる!わあってるよ!何でこんな態になっちまうのかなんざ!

嫌でも自分自身で、分かってるっての!

思春期を迎えてもいなさそうな、この少女の事が。



認めたくないけど―――――『大好き』
 



・・・・・・あ〜あ。もう誰でも良い。

オレの頭の中開けて、脳味噌かき混ぜてくんねえかな。

『大人の男』『理性』『ロリコン』・・・・・他いろいろ。

全部ごちゃまぜにして、『感情』一纏めにしちまえば。

こんな楽な事ないんだよ、本当。

誰ですカ?平常心や理性とかって、考えた奴は。

――――お陰様で。



感情に負けない様
死にモノ狂いで己と戦う羽目になっちまったよ。




とは言え・・・・・「うれしい」・「たのしい」・「大好き」と。



連なった、この言葉達が強過ぎて。

もう既に白旗揚げて、理性の言葉に負けそうな勢い。

ねえ、神楽サン。

驚かず、毒舌吐かずに―――――。



いっちょ、オレの言葉を。
聞いては、貰えませんかね?



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