EYES TO ME

死んだ魚の様な瞳。
銀色の天然パーマ。

糖分が死ぬほど、大好きで。
愛読書はジャンプ。
暇さえあれば、パチンコ。


今はソファに寝転び、ジャンプを熱読。
そんなマダオ侍に、気になってる事がある。


「銀ちゃん」

「あ?」

一言だけ。
こちらを見るどころか、軽い返事を投げ返して来た。

もう一度。

「銀ちゃん」

「ああ?」


態勢は変わらないけれど、さっきより少し強い口調。
こんの・・・・。
あくまでも、ジャンプから目を離さない気アルカ。

私も意地になって、更にもう一度名を口にする。

「銀ちゃん」

「・・・・だ〜か〜ら。何なんだよ?おめえは」

あ。やっと起きてこっち向いたネ。
不機嫌さを露骨に表し、眉間に皺まで寄っている。

「ね、笑ってヨ」

「はあ?どうしたんだ、いきなり」

怪訝な表情で、問い掛けられたから。

「だって今まで、銀ちゃんが笑ってる顔。見た事ないアル」

「そうか?そんな事ねえだろ?」


「ううん、無いヨ。胡散臭い笑みや、意地汚い・腹黒い笑みなら・・・何度も目にしてるけど」


折角正直に、答えただけなのに。

「お前ね、喧嘩売ってんの?」

さっきより、渋い顔になったアル。


銀ちゃん・・・酷い顔ネ。ジャンプの主人公あるまじき、表情してるヨ」

「誰のせいだ?誰の」

私は思わず、前に乗り出し。
何本も眉間に寄った皺を、右手の人差し指で押さえ伸ばした。

「眉間に皺寄せちゃ駄目アル。ほら、銀ちゃん。にこ〜っ」

さらに人差し指を離して、今度は両頬を抓んで上に押し上げる。


「いへ(て)っ。いへへへ(ててて)。ひゃめろって(やめろって)」

そう言って私の両腕を掴んで、思い切り引き離した。
掴んだ腕は、離そうとせず。

「そんなにオレの笑った顔が、見てえんなら。お前が笑わせてみろや」

あ・・・今まで見た、笑った顔じゃ・・・・ない。
知らない・・・笑顔。

「ただし、簡単には見せてやらねえぞ?」


不敵でいて、目が離せない・・・そんな笑み。

まさか不覚にも、この笑顔に心臓が高鳴ったなんて。
目の前の男には、絶対に教えてやらない。


「の、望むところヨ。『笑いの伝道師』とは神楽様の事ネ」


さあ勝負はこれから。
本当の笑顔を見せて。


小説トップページへ戻る