NON・SENCE
連ドラも見終わり。
テレビのブラウン管では、生真面目な表情をした
アナウンサーが、今日1日の出来事を淡々と語っている。
それらを耳に入れながら。
時刻を確認しようと、時計に視線を移した。
長針と短針が、丁度12の数を示そうとしていて。
テレビのリモコンを手に取り、電源を落とした。
と・・・途端に、同時に室内は静かになり。
溜め息を吐いて、無意識に独り言。
「まあた、午前様アルカ」
もう一人の、従業員である新八は。
夕食を作って4時間前に、帰宅。
そして。
ここの家主である、銀髪の男は。
夕食を終えると。
例の如く、不夜城へと繰り出して行った。
もう寝よう。
いくらここで、待っていたとしても。
帰ってくるとは、限らないのだから。
それに起きていたら、いたで。
悪酔いなどしてたもんなら
自分が介抱を、してやる羽目になる。
室内の電気を消そうと、立ち上がったら。
玄関の戸が、開けられた音。
「あ〜ただいま、帰り・・・ましたあ」
・・・くっ。遅かったカ。
玄関からは、かなり酔っ払った
銀ちゃんが。
「あれ〜?脱げ・・・ねえ・・・」
何やらガタガタと、格闘をしている。
「か〜ぐ〜らあ?起きてんのおおお?か〜ぐらちゅうわああん」
「・・・・・・・」
「かぐらちゃんってばあ?ちょっ・・・起きてたら、たすけてええええ」
「・・・・・・・」
「かぐらああ?起きてんだろおお?お前・・・これ、助けてくんねえと。
銀さんブーツに、飲み込まれちゃうよおおおおお?溶けてっちゃうよおお?」
ああ、本当に。
「うっさいアル!マダオ侍!今そっち行ってやるから、待ってるネ!」
つくづく甘い自分が、嫌になる。
仕方なしに、出向いてやれば。
ブーツを脱ぐどころか、そのまま突っ伏してる天パ男。
「あ〜・・・神楽ちゃん。サンキュ〜」
顔が床にくっついてる為、くぐもった声。
全く、後頭部に蹴りを入れてやりたいヨ。
履かれたまんまの、二足のブーツを手早く脱がしてやり。
「ほら、銀ちゃん。起きるアル!こんな所で寝てると・・・・」
起こそうとして、身体に触れようとしたら。
「!?」
突然、抱きつかれた。
しかも、結構力強く。
「ぎ・・・銀ちゃん?一体どうし――――」
何事かと思い、問い掛けようとしたら。
ぼそりと、耳元で囁いた。
「酔っ払いの・・・戯言だから。すぐ・・・忘れろよ」
その後に呟かれた言葉が。
『 』
私の耳と脳裏に、いつまでも響いて。
心臓が、早鐘の様に高鳴った。
急に身体を包んでいた力が、抜けたと思ったら。
静かに呼吸を、繰り返していて。
どうやら眠りの世界に、旅立った様だ。
「・・・反則アル」
いくら『戯言』と言われても。
そんな言葉、忘れられる訳がないヨ。
「・・・この、酔っ払い」
気持ちよさ気に・・・寝ている顔を見てたら。
何となく、悔しかったので。
思い切り鼻を、摘まんでやった。