A THREAD OF FORTUNE

手を目の前に、持ってきて。
小指をじっと、見つめてみる。

『左手の小指には、赤い糸が結ばれている』

さっきテレビのワイドショーで。
結婚をした、有名人がそんな事を言っていたのだが。

実際、目を凝らして見たって。
赤い糸どころか。
そんなもの、結ばれてる訳もない。

・・・・と言うか。
『赤い糸』って何アルカ?
首を傾げ、さっきよりも凝視していたら。

「何をそんな難しい顔してるの?神楽ちゃん」

洗濯物を取り込み終わったらしい、新八が。
私の様子に気づいて、声を掛けて来た。

「・・・『赤い糸』って、何ヨ?」
そう言って左手の小指を、新八に向けてたら。
「ああ」と、メガネは笑った。

「『運命の赤い糸』だよ。自分の左手の小指と
将来結ばれる相手の左手の小指に、繋がっているって言い伝えがあるんだよ」

・・・・へえ。そんな言い伝えがあるんだ。

「何?神楽ちゃん、赤い糸でも見えたの?」

からかい口調で、新八が問いかけて来たので。

「見えても、お前には繋がってないから。安心するヨロシ」と返してやったら。
「はいはい」と、苦笑いを浮かべて居間を後にした。

再び、小指に視線を移して。
右手で、見えない『糸』を何気に引っ張ってみたら。

目の前のソファ−で。
口を大きく開けて寝ている
銀髪の天然パーマ侍の、左手の小指が。

『ピクリ』
と、動いた・・・気がした。


私の運命の人が、あなただったら良いのに。


小説トップページへ戻る