時刻は午前0時を過ぎた頃。
『万事屋』の居間には、オレと神楽の二人きり。
時計の秒を告げる針だけが、鳴り響いている。
大人しくソファに座る、神楽の前に立ち。
陶磁の様な肌理細やかな右頬を、優しく触れながら。
小さな顎に右手の親指と、人指し指を到着させて。
軽く持ち上げる。
「・・・・・・・・」
強気な2つの碧眼。
例え視線が絡んでも。
決して逸らそうとはしない。
全く・・・強がっちまって、まあ。
「・・・どうしたアル?ひょっとして、怖気ついたカ?」
怖気ついてんのは、お前の方のくせに。
勢いがある台詞の割には、心なしか声が震えてんぞ?
なあ。
ホントにお前。
『オレのモノ』になる事を、望んでんの?
そう思ってくれんのは、男冥利に尽きるし嬉しいけど。
・・・まだ・・・早いんじゃねえ?
だって。
「―――――いつまで、そのままでいるつもりネ」
なんて。
無表情を装ってるけど。
声どころか、身体全身が。
微かに震えてんじゃねえか。
身体を屈めて顔を近づけて。
小さく淡い唇に、軽く触れてみれば。
「―――――!」
一瞬だけ華奢な身体を、硬直させ。
きつく、両目を瞑って。
オレの服と着流しを、両手で力強く掴んでいる。
唇を離し、視線を顔に移せば。
強気だった、碧眼が潤んで。
白い頬が、僅かに赤く染まっていて。
・・・やれやれ。
これはある意味、『拷問』じゃねえか。
オレは一体、どうしたら良いんでしょうね?
震えるお前を、抱いて。
この手に入れてしまうか。
それとも。
非難を覚悟で、時期が熟すのを待つか。
さて?
ミス・ポーカーフェイス。
あなたはどちらを、お望みですか?