君に触れるだけで

例えば。

『肩先が触れた』とか。

『指先が触れた』とか。

一緒に住んでいて、同じ室内にいりゃあ。
そんな事は、よく起きる。

けれど。

たまたま。
アイツの華奢な肩に、触れた時や。
白く細い指先に、触れた時。

その箇所が。

何となく――――暖かく感じる。

神楽の『存在』を、伝えてくれる様で。

何となく――――ほっと、する。

現に今も。
二人並んで、長椅子に腰掛けて。

愛用の酢昆布を齧りながら。
テレビの画面に視線を送る少女との。
数センチ開かれた、その距離を。

「コホン」と軽く、咳払いをし。

少しずつ、埋める様に近付いて。

椅子に置かれた左手の指先に。
それとなく――――自身の指先を触れさせる。

ホントは、手を握るなりして。
もっとコイツを感じたいのに。
今のオレには、これが精一杯。

・・・・つうか。

大の男が、そんな事。
出来る訳がねえ。
勇気もねえ。

あまりの自分の不甲斐なさに。
溜息を吐きたい気持ちを堪え。
右手を退けようと、したら。

「!?」

急に、手を掴まれる。
それと同時に、伝わる『体温』。

「銀ちゃん」と、テレビから。
こちらに視線を向けて、にっこりと微笑む神楽。

ああ、やっぱり。
お前は、凄いよ。
オレがしたい事、して欲しいと思う事を。
すんなり、してくれるんだもんな。

微笑んだ神楽に、オレも微笑んで。
握られた手を、強く握り返した。

ほら。
君に触れるだけで。

こんなにも、幸せ。



※すみません、銀さんが「へたれ」になってしまいました。
いやあ・・・・実際本誌でも、こんな銀さんをみてみたいと思いまして。←まず無理。
思わず書いてしまいました。
この様な駄文に目を通して下さり、真に有難うございました。

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