アサイラム
物心ついた頃に、マミーが亡くなり。
兄ちゃんも、パピーもいなくて。
『一人』が耐え切れず。
そこから逃げる様に、故郷を飛び出し。
――――此処、『地球』に辿り着いた。
けれど現実は、何ら変わる事無く。
下手をすれば、故郷にいた頃よりも。
凄惨な日々を、過ごしていたと思う。
生き残る為に。
命じられるがままに、この手で人を傷つけ。
私の周りには、常に『血の匂い』が付き纏った。
そんな毎日に、嫌気が差して全てを投げ出し。
―――逃げた末に、出逢ったのが。
やる気の無さが、全身から醸し出された。
銀色の、天然パーマの侍と。
真面目が、取り得しかなさそうな。
メガネ少年。
最初は『故郷に戻りたい』の、一心だったけど。
『万事屋』に、身を置くようになる内に。
いろんな人々と、接して触れ合っていく内に。
自然と冷えた心が、徐々に溶けていくのが分かって。
そして少しして、とっても可愛い白い巨大犬が加わり。
飽きる事無い、楽しい日常が訪れ始める。
いつしか―――此処が、私の『居場所』になっていた。
人の『冷酷非情』を、否応無く味わって来た日々と違い。
『優しさ』と、『笑顔』を与えてくれるのだ。
目の前でだるそうに、左手の小指で鼻を穿る男を見つめる。
「・・・・あ?何だよ?人の顔、じ〜ィっと見やがって」
「――――――」
「そんな真顔で、見つめられてもなあ。・・・オレの拝観料、高いよ?」
「――――――」
「・・・あの〜。さっきから、一体どうしたんすか?落ち着かねえっての」
眉間に皺を寄せ軽く溜息つく、銀ちゃんに笑って一言。
「――――アリガト」
「――――は?何で、お礼?」
「良いから、受け取ってヨ」
私の言葉に、怪訝な表情を浮かべるマダオ侍。
もし―――『あの』出逢いが、なかったら。
こうやって笑顔を、浮かべる事さえ出来ずに。
『孤独』と『闇』の中を、永遠に彷徨っていたかも知れない。
私を―――そこから、救い出してくれたのは。
『オアシス』へと、導いてくれたのは。
紛れもない。
銀ちゃん、貴方なんだよ。