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LIP STICK 後編 銀時ver



「―――――――」

・・・・いかん――――いかんよ!オレ!
何を血迷ってる?集中だ、集中。
思考を追い払う様に、言葉を綴った。

「良いか?口紅ってのはな。ただ唇の輪郭をなぞれば、良いってもんじゃねえんだぞ?
ほれ、少し口を開け。まず、下唇の―――――」

口紅を柔らかそうな、下唇に当て・・・・ゆっくりと輪郭をなぞる。

「本当なら、紅筆があれば・・・・もっと綺麗に――――」

そうなんだよ、筆がありゃあ丁寧に描けるってもんなのに。
・・・・お妙も・・・・気が利かねえなあ。
どうせだったら、ワンセットで寄越せばいいものを。

とりあえず、思う様な縁取りが出来きたので。
一旦顔を離し、確認をする。
食み出す事も無く、鮮やかな赤色が唇を彩った。

―――――結構、良い出来でないの?これ。

「よし、下唇はこんなモンか」と、納得し。
次は上唇か・・・・これ一つで、塗れっかなあ。

「これが結構・・・・難しいんだよなあ。
まず――――上唇の端から、食み出さない様に・・・・縁取りしながら天辺に向かって――――」

もう殆ど独り言状態で、右手を動かしていき。
顎を捉えている、左手を何度か角度を変えながら。

上手に縁取る事が出来たので、「おっし」と首を縦に振る。
反対側に取り掛かろうとしたら、神楽の瞼が閉じられ様としていた。

―――――え・・・・?何で閉じるんだよ?

思わず、鼓動が一度だけ高鳴り。

完全に閉じられた、両瞼を見つめ。
無意識に唾を、飲み込む。

しかも警戒心も、0と言って良いほどの無防備。
こんな至近距離で、両目を瞑るって・・・。

お前ねえ・・・・野郎の前でそんな真似したら、大変な事になるんだよ?
『襲って下さい』って、言ってる様なモンじゃねえか。

―――――いやいやいや、そこまで考えるな。銀時。
オレはあくまでも『保護者』であり、『雇い主』―――――そうだろ。

理性と感情の狭間で、どうにか平静を装い。
邪念を払って再度反対側も、取り掛かる。

時折食み出してしまったので、指でそれを拭いながら。
綺麗に塗り終えると、ティッシュを持ち出し。
軽く上から、押さえ込み―――――完了。

「―――――おっしゃ、終了!オレって器用だわ~♪」

あえて明るく振舞い、両目を開けた神楽に「見てみろ」と手鏡を渡す。
遠慮がちに手鏡を持つ、少女の顔は。

口紅と言う、化粧道具一つだけで―――――『少女』から『女』に変わった。

こうも・・・・フインキが、変わるモンなのかと。
内心、驚きを隠せない。

手鏡を持ったまま、微動だにしない神楽に。
横から鏡を覗き込んで、正直な感想を齎す。

「――――女は髪型と化粧で、変わるって言うけど。ホント、その通りだよなあ」

「・・・・私、変わった?」

一瞬だけ、嬉しそうな顔を浮かべる少女に対し。
鏡から視線を逸らして「多少は」と、耳を穿りながら同意をする。

本当は想像以上に、イメージを覆されたが。
口にしたらきっと、調子に乗りそうなので言わないでおく。

「大人っぽい?少しは、銀ちゃんに近づけたカナ?」

再度質問をされて、小指についた耳垢を軽く息吹き掛け。

「・・・・ば~か。ガキはガキらしく、背伸びしねえで。今持ってる『美しさ』を、大事にしなさい。
嫌でも大人になって、化粧しないといけない時がくんだから」

―――――神楽の頭を、軽く叩き。
背伸びをしながら、居間を後にし己の部屋へと向かった。

そう・・・・焦んなさんなって。
化粧なんてモノせんでも―――――お前は十分、『美』を備えているさ。

その『美』を備えたまま、大きくなり・・・・化粧を施した時。
それこそ、野郎共は放っておかねえんだろうな。

・・・・そう思うと――――な~んか、複雑。
―――――複雑・・・・つうか・・・・何だろな?このモヤモヤ感。

まあ・・・・それは・・・・置いといて。

『少しは、銀ちゃんに近づけたカナ?』

この言葉につい、思わず笑みが毀れそうになった。
ひょっとして・・・・慣れない手付きで、口紅を施そうとしたのは。

オレの為だった―――――って訳か?

和室の襖を後ろ手で、閉めながら。
両目を瞑って、笑みを浮かべる。

お前がこの先年齢を重ね、本格的に化粧を施す様になったら。
さっき口に出さなかった言葉を、贈るとするよ。



『綺麗』の二文字を。



以前書いた、「LIP STICK」神楽ちゃんVerに対して
銀さん視点で書いてみました。
が・・・・銀さんが、銀さんじゃあない・・・ORZ毎度の事だろ。

しかし・・・実際本誌で神楽ちゃんが、目の前で両目を瞑ったら。
どう反応するんだろう、銀さん。
綺麗にスルーか、それともツッコミか?
どうせだったら、慌てふためいて欲しいです。

あくまでも、希望なんですけどね。

この様な駄文に目を通して下さり、真に有難うございました。


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