この気持ちが、もし『恋』だと言うのなら。

―――――口外しないヨ、絶対。

『クソガキが何言ってんの?』って、言われそうだし。

真面目に、受け取って貰えないデショ?

呆気に取られた数秒後、馬鹿笑いするに決まってるもんネ。

『冗談は止めろよ』とか『何か悪いモンでも、拾い食いでもしたか?』

なんて言葉、鼓膜に届いたら――――立ち直れないヨ、きっと。

・・・・・そう。

私はあの男の前では、『大喰らいの色気の無い、クソガキ』を演じなきゃいけない。

『女』の部分を、感じさせちゃいけないんだ。

―――――それが。今まで、此処にいさせてくれた理由なのだから。

自分にとって害の無い、お気楽な少女。

それが――――銀髪男が認識している、私・・・・『神楽』。

でも、この感情って。

知ってしまうと、案外やっかいなものと知る。

銀髪男と接点がある女性達は、皆――――綺麗で。

何ら当たり障りの無い、会話をしてるだけなのに。

私の胸中は、穏やかではいられなくなる。

醜いモノが現れ、いつの間にか螺旋を描いていくのだ。

けれど・・・・それは、表情には出しちゃいけない。

気にせぬ素振りをするか、平静を装うだけ。

そうしないと、私は『万事屋』にいられなくなる。

それだけは、絶対に嫌だ。

『ガキ』の称号を手にしてる代わりに、私は銀髪男との共有時間を得ている。

それは唯一、私だけの特権。

他の女性達には、出来ない事。

だから――――私は何時までも『神楽』を演じるヨ。

振り向いて欲しいなんて、思わない。

そんな願いは、叶わないって最初から理解してる。

『初恋』は、実らない。

―――――何処かで、聞いた言葉は。

細い針となって私の心臓に突き刺さり、鋭い痛みを認識させた。

でも・・・・でも。想ってるだけなら、良いよネ?

想うだけの気持ちは、持ってても良いよネ?

いつか――――本当に。

銀ちゃんが誰かを、好きになる日までは。

その時は――――ちゃんと笑って。

『やるじゃねーカ』と、野次飛ばしてあげるヨ。

心臓の痛みと、一緒に。




背景画像はなつる様が運営されているサイト
「空に咲く花」様より、お借り致しました。




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