――――もう、良いじゃん。人の好意を無にする様な事、しないでヨ。

これ以上の質問をして、一体何になるっていうアル。

銀ちゃんの気持ちを、考慮してるんだロ?悟ってヨ、いい加減そのくらい

大体どうして、こうも絡んで来るアルカ!もう、そっとしておいてヨ!

男に対して苛々が沸々と、湧き上がって来る。

「お〜い、返事がねえぞ?」





ぷっつん。





―――――と。何処かで、何かが切れる音。

気付いた時には、既にもう遅し。

私の口は嘘の様に饒舌になり、舌の回転も速くなっていた。

「『冗談』にしてやろうっていう、人の親切が。分からねえのカ!?このマダオ天パあ!私から『好き』と告られたって、困るだけなんだロ!?だったら、それを黙って受け入れろヨ!昨夜の事なんざ、綺麗さっぱり流して!今まで通りにすりゃあ、良いだけの話じゃねえカ!銀ちゃんは『家主兼雇い主』!私は『居候兼従業員』!これで、問題無いアル!」

両肩で息を吐いて、今まで合わせられなかった2つの瞳を。

眼前の銀髪男に向けて、睨み付けていた。

「・・・・それが。お前の本音?

怒りで興奮状態の私とは反対に、銀ちゃんは両腕を組んで飄々としている。

「そうアル!返答もしたし!もう、十分デショ!?」

怒声を発した後に続いて湧いて来たのは、『』だった。

目頭が、熱くなってるのが分かる。――――けれど。

銀ちゃんの前で、泣いてたまるか。

この意地が溢れそうな涙を塞き止め、かろうじて留まらせていた。

踵を返し、銀髪男に対して背を向ける。

自分の口から、出て来た言葉達だけど。胸を突き刺すのも、事実で。

―――――泣かない。絶対に、泣かない。

背後に佇む男をほっといて、鉛の様に重くなった足を。

引き摺る様にして、前へと進み出した・・・・その時。

勝手に一人で、結論付けてくれちゃって。まあ

銀ちゃんののんびり口調が、背中に届けられる。

数歩しか歩いていない足が、ぴたりと止まった。

「オレさあ。別に、何にも言ってなくね?『冗談』っていう言葉を先に切り出したのは、お前の方だし?」

そういう風にした方が良いって、思わせたのは何処の誰だヨ。

「じゃなきゃ。昨夜の事を、無かった事には出来ねえだロ

番傘の柄を掴んでいた右手に、無意識に力が篭る。

「ふう〜ん。つまり――――お前は、綺麗さっぱりにしたい訳ね?」

見当違いの台詞に、思わず肩越しから振り向いて反論していた。

「ちがっ――――!それは、銀ちゃんが――――」

「だ・か・ら。オレは別に、何も言ってないって。『冗談』だったのか?って聞いただけで」

私が男から数歩離れた分を、埋める様にして――――再度近づいて来る。

地面に伸びていた2つの影も、今は天の群青色に染まって無くなっていた。

「だったら!どうして、普段通りに接して来たアルカ!?
『告白』自体を無かった事にして、今まで通りの二人でいたかったからなんでショ!?」

確かに、何も言われて無い。だからこそ、そう受け止めるしか無かった。

「どうしてって・・・・言われてもなあ?」

着流しの懐に忍ばせていた右手を持ち上げ、決まり悪そうに頬を掻いている。

「何ヨ!?」

「お前と――――どう接すりゃ良いか、分かんなかったから

「はあ?」

怒りを通り越して、頭に『疑問符』が幾つも浮かんだ。

どう接すりゃ良いか、分からない。

・・・・何を言ってんだ?この男は。

「お前からの『告白』が、思った以上に衝撃的で。いつもの様にしか、振舞えんかった

――――『衝撃的』?

「前振り無く、だろ?しかも告った後、お前すぐ押入れ入っちまったし。もうあの後、布団の中で一晩中悶々としてた訳よ。
一体、どういう意味だったんだ?』とか。『神楽がオレに好きと言った』とか。『もしかして、からかわれているんじゃ?』とか。なんつか・・・・戸惑いとか疑問とか、そんな中でも喜んでる自分とか
――――いろんなモノが入り混じってよ。お陰様で、寝不足だよ。コノヤロー。どうしてくれんだ」

・・・・・え?今、何て言った?

「喜んでるって・・・・・・銀ちゃん?」

私の視線をモロに受けて、銀髪男は顔を思い切り逸らし。





「『冗談』で、済ませんな。ばあか」





と、言い放つ。

止めていた両足を漸く、動かすと――――私の隣まで立ち並び。

もう夜だから番傘を、閉じる様に命じると。

空いていた左手を、掬い上げた。

「―――――帰るぞ」

冷たい空気を受けていた左手に、自分とは違う体温が伝わって来る。

・・・・え?この状況って・・・・?

「ぎ、銀ちゃん!?」

慌てふためきながらも、男に遅れを取るまいと必死に両足を動かして。

視線を銀髪男に移動させれば、こちらを見る事無く真正面を向いていた。

その代わり、左手を強く握って来る。

―――――私の気持ちを、受け入れて・・・・くれるノ?

片思いが、叶ったと。思って良いのだろうか?

「・・・・銀ちゃん」

「あ?」

相変わらず視線は真っ直ぐで、返答だけが戻って来る。

「――――好きでいて、良いの?

私の質問に、銀ちゃんは笑みを浮かべると。

「お前こそ、覚悟しとけよ?こう見えて、銀さん。嫉妬深いし、独占欲強いからね。後で泣いて喚いたって、知らねえぞ」

・・・・確かな返事は、貰えなかったけれど。

要は―――――つまり。

好きでいて、良いんだ。

諦めなくて、良いんだ。





『坂田銀時』の隣にいても、良いんだ。





私の左手と銀ちゃんの右手が、繋がっている

たったそれだけの事なのに、凄く嬉しくてしょうがない

「何、にやけてんだ〜?」

「にやけてなんか、ないアル」

図星を突かれて、咄嗟に素っ気無い返答。





ね、銀ちゃん。私――――今夜も、眠れそうにないヨ

嬉し過ぎて




伸ばされきっていた、私の左手の5本の指は。

無意識に男の手を、握り返していた。





『好き』の気持ちが、今以上に伝わってくれる様に。

願いを篭めて、強く。






THE SIGNS OF LOVE






※なんだか久々に、甘い銀神を書いた様な気がします。←甘いのだろうか?これ。
最初「未来銀神」にしようかとも、思ったんですが。良いや!現銀神で!と、開き直りました。
切な甘め系大好きなんですけれど。最近少女マンガ的なお話しが書けなくて、大変困っております。←要はスランプなんでしょうね。←いや、万年だろ。
大好きなんですよ!少女マンガも!読んでても銀魂に、こんな展開来てくんねえかなあって感じですよ。無理なんですけれども。
本誌では銀さんと神楽ちゃんが、ガチで喧嘩してたらしいですしねえ・・・・・。喧嘩する二人も、良いんですけれども。バトルとかになっても、良いんですれども!
やっぱり銀さんと神楽ちゃんには、お互いにっこりしていて欲しいですよねえ。←お〜い。新八君は?
作品の中で銀さんが、自分を「嫉妬深い&独占欲が強い」と行ってますが。これは私の、勝手な妄想です。←銀さん、ごめんなさい!

題名はご存知の方もたくさんいらっしゃると思いますが、ドリカムの名曲「THE SIGNS OF LOVE」からお借りしました。
この歌はほんっっっとうに、良い歌で!初めて聴いた瞬間、即惚れこみ。流石ドリカム!と、拍手喝采しておりました。
名曲・・・・の嵐だよなあ。ドリカムは。

この様な駄文に最後まで目を通して下さり、真に有難うございました。



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