AN ANNULAR ECLIPSE 前編
家事を終えた新八が。
軽く唸って、背伸びをし。
ソファーと言う名の、長椅子に腰掛て。
テーブルの上にあった、テレビのリモコンに手を伸ばす。
他にする事も無く。
依頼がある訳でも無く。
する事と言えば、やっぱり『ジャンプ』の熟読。
パチンコでも、良かったんだが。
先立つものが、なけりゃあ意味がねえ。
しっかし・・・読み過ぎて、ボロボロな上。
うっすらと、手垢までついてる。
どんだけ、読み返してんだ?オレ。
下手すっと、全ページの内容。
覚えてっかもな。
「あ」
新八の発した一言に、思わずテレビに視線を移せば。
「――――今日だったんですね。あれ」と。
ブラウン管を指差し、こちらを振り向く。
局アナが、営業用の笑顔を浮かべながら。
『20XX年の今日の正午前後、このお江戸の空に幻想的な、『リング』が出現します』
幻想的な・・・リング・・・・?
怪訝な顔をして、聞き入ってた為か。
新八が、苦笑し。
「金環食ですよ。聞いた事ありませんか?」
金環食・・・・ねえ。
「月の外側に太陽がはみ出して、細い光輪に見えるんです」
「へえ・・・・」
なおも、新八の説明は続いた。
「金環食ってなかなか、拝めるものじゃないんですよ?
月食なら満月の夜だったら、どこからでも見れますけど。
この金環食が見れるのは、限られた場所で数分しか見れないんです。
とても希少な、現象なんですから」
「――――で?それが、今日だと」
「ええ。このお江戸から見れるのも、今日だけです」