ETERNITY 前編


―――――『運命の日』・・・・の前日。
なけなしの金を叩いて、とある店の前に。

佇む事・・・・1時間。
頭を悩ませ、更に30分。

ガラス越しから、己の存在を。
『強調』して来るかの様な、複数の『商品達』。

「・・・・・・・・・・」

ついつい目が行ってしまう、商品前に置かれた『数』のプレート。

―――
おいおいおい。何デスカ?何ナンナンデスカ?この値段。
せめて『0』を、2つか3つくらい削除しろっての。

誰が買うんだ?こんな高額商品。
思わず眉間に皺を寄せ、唸っていたら。

――――お客様?当店に御用でしょうか?」

「!?」

突然背後から、声を掛けられる。
肩越しに振り向けば、此処の店員らしき女性が。
笑顔を浮かべて、会釈をして来る。

・・・・・・・そうだよな。

こんな男が1時間半近く、店前に突っ立ってられちゃ。
見たくなくても、視界に入って気になっちまうよなあ。

――――ずっと。こちらのショーウィンドウと、睨めっこされておりましたので」

右手を口元に当て、小刻みに身体を震わせる。
笑われる程―――そんなに、間抜け面だったんか?

「あ〜・・・すんません・・・ちょっと、どんなモンかなあと」

無意識に頭に手をやり、軽く掻きながら首を縦に振った。

「店内にも、豊富に品を揃えてありますので。宜しければ―――――

営業スマイルを浮かべて。
「どうぞ」と言わんばかりに、入り口へと誘導。
今更逃げ出す訳にも行かず、自動扉の向こうへと足を踏み入れた。

―――――――

入った瞬間、いくつかのガラスケースが置かれ。
その中に綺麗に陳列された、貴金属達。
室内の照明を受け、輝く存在をアピールして来る。

初めて訪れた店に、思わず圧倒されて。
お上りの様に、首を左右に動かしていたら。

「どういった品物を、お探しですか?」

隣に立ち先程の笑顔で、問い掛けて来る女性店員。

――――どういった・・・・モノ?」

「指輪・ネックレス・ブレスレット・アンクレット・ピアス・イヤリング等――――

説明してくれんのは、非常に有難いんだが。
指輪やネックレス・・・・イヤリング・ピアス等は目にした事もある。

――――
が・・・・その先は未知の世界。

畳み掛ける様に喋り続ける店員に、思わず「指輪です!」と一言。

「まあ、指輪ですか。彼女様宛てに、ですか?プレゼントか何かで?」

「・・・・はあ、まあ」

――――
何だかなあ・・・一人で、来るんじゃなかった。
苦手なんですけど、この空気といい―――空間といい。

どうやら今んとこ、客らしき人物はオレだけみたいだし。
でも―――かと言って。

本人を連れて来たら、この『覚悟』も意味が無くなる。
・・・他の奴等を誘うモンなら、絶対笑い話のネタにされそうだよなあ。

いかん・・・何かもう、帰りたくなって来た。

「お誕生日プレゼントですか?」

居た堪れない中、無言で「違う」と首を左右に振り。

――――婚約指輪で?」

「・・・・・・・・・・」

『そうだ。』と、口で言いたいのに。
『婚約指輪』の四文字が、耳に届いた瞬間。
顔が熱くなるのが分かり、額から汗が一筋。

――――
すんません!何かもう、逃げて良い?
こんな自分が、痛いんですけどおおおおおお!

「・・・違われました?」

――――――――――

再度首を、左右に振る。

「プロポーズする為の、婚約指輪をご希望なのですね。畏まりました」

店員さん!頼むから―――そう何度も言わないでええええ!
もうオレ今めっさ、穴があったら入りたい気分だから!

しかしそんな事は、気にも掛けて貰えず。
女性店員は、とあるスペースに置かれた。
『コ』の字型の、ガラスケースに向かい。

―――こちらが、『婚約指輪』スペースになっております」

佇むオレに、にっこりと微笑む。


※普通1時間半も店頭のショッピングウィンドウに
佇む男性っていませんよね?←いるんかな?
すみません、敢えて銀さんには佇んで頂きました。


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