A DETERMINATION OF RING FINGER 後編


予想とは裏腹に、箱の中にもう一つ。


手触りの良い、ケースの様なモノが。
不思議に思い急いで取り出し、二度目の蓋を開けると。

―――
そこに。

「・・・こ・・れ・・・って」

窓から入る光を浴びて、輝く『透明な石。』
その輝く石を支える様に、銀色の、『輪』がある。

「お前に、やる」

先程と同じ台詞が、隣から聞こえて来た。

「ぎん・・・ちゃ」

ゆっくりと顔を上げて、確かめる様に。

「これ・・・。もし・・・かして・・・?」

問い掛けると、銀髪の男は。
横向きで愛想の無い顔を、見せたままの状態。

でも・・・心なしか頬が、赤い様な気もする。
一つ、咳払いをして。

「・・・・お前の――――想像通り」

そう言うと。
口を『への字』にして、乱暴に天然パーマを掻き始めた。


―――――
瞬間。


時が止まったかの様に・・・・思考はおろか、身体も動かない。

・・・・う・・・・そ?

「お〜い?神楽ちゃあん?どした〜?」

気付いたら。
眼前に無骨だけど、大きな手が。
上下を行ったり、来たりしている。

――――何でも・・・・・・ない」

再び、光輝く『指輪』に視線を落とし。

「嘘・・・みたいアル」

――――嘘じゃねえよ。ほれ、それ貸せ」

言われた通りに。
指輪の入ったケース毎、差し出すと。

銀ちゃんは、右手で私の左手を取り。
己の左手の、人差し指と親指を使って。

ゆっくりと。

『薬指』に、『指輪』を嵌めた。

――――実感、湧いたか?」

私の左手に、小さく光る『宝石(いし)』。

―――――――

感動する様な、『言葉』も無いし。
ムードの欠片も無い、いつもの場所だけど。

「・・・・うん」

私にとっては最高の、銀ちゃんからの『プロポーズ』

驚いた事と嬉しい事が、同時に味わえるなんて。
生まれて初めて・・・かも知れない。

「で?お返事は?神楽ちゃん。言っとくけどね?
『それ』買うのなあ、銀さん。・・・めっさ恥ずかしい思いを、したんだよ?」

照れ隠しなのか。
言い訳の様に、早口で捲くし立て始めた。

全く・・・仕方の無い、マダオ侍アル。
もうちょっと『余韻』を、味あわさせてヨ。

けれど・・・・・そんな男を、好きになったのは自分自身。

思わず。

指輪を購入しようにも、悪戦苦闘している。
銀ちゃんの姿が、脳裏に浮かんだ。

―――――
あ、マズイ。笑いそう。

緩みそうになる、両頬を必死に堪えていると。

「・・・人の話し、聞いてる?聞いてま〜すか〜?返事、寄越せや。コノヤロー」

返事って、今更だヨ銀ちゃん。

―――既にもう。心は、決まってるネ」

私に初めて、この気持ちをくれた貴方と。
一生を共に過ごしていけるなら、こんなに幸せに思う事は無い。

ほらね?
左手の薬指に嵌った、小さな『宝石』が。
まるで、祝福するかの様に。

一筋の光を、描いたよ。



※プロポーズ話、いかがでしたでしょうか?
疑問や「こんなの有り得ない!」と思われたら、申し訳ありません。
尚苦情等は勘弁して下さいませ。とても小心者ですので・・・・・ORZ
此処まで読んで下さり、真に有難うございました。


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