銀河ターミナルに、両足を着かせる。

「・・・・・・・」

宇宙の玄関口でもある、このターミナルには。

人間と天人が、相変わらず行き来している。

―――――懐かしい。初めて此処に訪れたのは、何時以来だったろう。

『不法侵入』、という形だったが。

私は新たな居場所を求めて、『地球』へとやって来たんだった。

「どうだ?懐かしいか?」

背後からの父親の声に、私は首を一度だけ縦に振る。

「―――――そうか。オレはちょっと、幕府のお偉方に用があるから。此処で一旦、別れるぞ。
お前も自由に、行動して来ると良い。――――それと、宿泊先は」

そう言うと徐ろに、ポケットに手を入れて。

小さな紙切れを、差し出してきた。

「オレがいつも、『地球』で滞在するホテルだ。気が済んだら、此処に戻って来い」

「分かったネ」

紙切れを受け取って、了承すると。

父親は、「じゃあな」とだけ言って――――踵を返していく。

徐々に小さくなっていく、背中を見送り。

完全にその姿が見えなくなると、私は盛大に溜息を吐いた。

・・・・さて。これから、どうするカ。

此処で立ちんぼしてるのも、馬鹿みたいだし。

とりあえず、以前自分が屯していた街へと繰り出そう。

少ない荷物を右肩に掲げ、愛用の番傘を握り締めると。

宇宙への玄関を、後にした。

久しぶりの、『かぶき町』は。

目を張る振りの、変わり栄えも無く。

―――――かと言って。私が知っていた頃の街並み、という訳でも無く。

変わった様でいて、変わっていない様な。

そんな印象を、受けた。

「・・・・久しぶりアルナ。この地を、踏むのも」

街中では人間達と、天人達が往来し。

視線の先では街の象徴である、『お江戸城』が―――――今でも。

堂々たる姿を誇示し、中心に鎮座している。

人混と、喧騒の中を搔き分けて。

私は――――とある場所に、向かっていた。







「・・・・・あった」

『万事屋 銀ちゃん』の、看板を視界に捉え。

二本の足は、無意識に速くなる。

まだ路を、忘れてはいなかった。

身体に染み込んだ『習慣』と言うのは、そう簡単に消えるモンでも無いらしい。

―――――しかし。此処まで来たは、良いけれど。

依頼が入っていて、二人共不在だったら。

依頼が入ってなくても、二人共不在だったら。

後者の方が圧倒的に、率は高い。

・・・・・やめておくカ。

逢いたい気持ちはあるけれど、今は出直すとしよう。

数秒――――懐かしさが込み上げる、『万事屋 銀ちゃん』の看板を凝視して。

踵を返し、その場から離れようとした――――時だった。

「・・・・か・・・・ぐら?」

背後から驚きと戸惑いの混じった低音の声が、鼓膜に届けられたのは。

「かぐ・・・・ら・・・・?お前・・・・神楽、だろ?」

突然の事で、驚きの方が勝り。

問い掛けられているのに、返答する事が出来ずにいた。

「―――――――」

――――この声は、間違いない。

私は固く口を閉じたまま、ゆっくりと・・・・肩越しから振り返る。

『万事屋』から離れた時より、幾分か顔つきも引き締まり。

元々端正な顔立ちだったが、更に精悍さが加わった気がする。

残念なのは、顎に無精髭が――――ちらほらと、生えてる事くらいか。

死んだ魚の様な瞳と、揶揄された2つの瞳は。

そんな喩えを、感じさせない程に――――大きく、見開かれて。

私の姿を、捉え続けたままだった。

自分が知っていた、『坂田銀時』ではもう既に無くて。

――――何だか、男らしくなったアル。

決しては口には出さず、胸中で呟きながら。

私は、唇の両端を持ち上げた。

以前の私なら、きっと大層喜んで。

本能の赴くままに、男に飛び付いていただろうけど。

もう『ガキ』だった頃の、自分では無い。

『女』として、ある程度成長し――――『理性』と『常識』を兼ね備えた。

こんな往来で『年頃』の娘が、『男』に飛び付くなんぞ言語道断である。

ましてや、私と眼前の銀髪男は。

『家族』でもなければ、『恋人』でもないのだから。

『仲間』で『信頼関係』はあったけれど、ただそれだけの関係。

―――――もう前の様に、自分から歩みよる事は無い。

そう。『大人』になったのヨ?私も。

驚愕の表情を、浮かべたままの男に対して。

私はもう一度、微笑んだ。

「久しぶりアルナ。銀ちゃん」












久し振りに、対峙した私を。

成長して、大人になった私を。

貴方は、どう感じて。どう思うんだろう?










久しぶりの I MISS YOU










※すみません。ちっとも、銀神ではないですね・・・・・・・ORZ
最近スランプなのか、甘い銀神が書けなくなっております(T▽T;)
成長させて落ち着いた神楽ちゃんにしてみたら、こんな風に出来上がってしまいました。
銀さんへの気持ちは、多分あると思うんですけども!←多分って何だ?
とりあえずは銀さんと一線を引く神楽ちゃんも、良いじゃねえか!と開き直って書いてみた次第です。
申し訳ありません・・・・・次回は、銀神で書きますので!どうぞ、お許し下さいませ。

この様な駄文に目を通して下さり、真に有難うございました。





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