無いと続けようとしたのだが、言葉を遮られてしまう。


「嘘つきやがれ。楽しそ〜うに、だべってたじゃねえか。
しかも薬指に、指輪まで填めて貰って。嬉しそうだったもんなあ?神楽ちゃんは」



ふんっと鼻息を出し、意地悪く――――唇の片端を上げている。

「はあ?どっから、そういう話になってくるネ!」


満更でも無さそうな顔、してやがったじゃねえか!―――つうかな!
隙があり過ぎんだよ、お前は!男は皆、『獣』と言ってあるだろうが!しかも
売り手の煽てなんざに、中てられやがって!
あんなのはなあ!品物を買わせる為の、常套手段なんだよ!」



・・・・・何だか、ヤケに絡んで来るナ。


「ようするに・・・・・銀ちゃんは。
私が――――あの男に、薬指に指輪を填めさせてしまったのが気に入らないアルカ」



は!?気に入らないなんて、銀さんは
一言も、言ってませんケドお!?自意識過剰なんじゃないの?



「じゃあ、ぐだぐだと。いつまでも同じ事、言ってんじゃねえヨ!
露店売りが指輪を填めちゃったのは、仕方ねえダロ!気付いたら、そうなってたんだし!不可抗力アル」



街の往来の中で、喧嘩しながら。

いつの間にか『万事屋 銀ちゃん』へと到着。

お互いそっぽを向いたまま、居間へと足を運び。

険悪な空気が、室内を充満していく。

ああ・・・・失敗したな。新八と定春の散歩を、代われば良かった。

――――てか、早く帰って来いヨ。新八いいい!定春ううう!

盛大な溜息を吐き出し、長椅子へと腰掛けた時。

ふと右太股辺りに、違和感を覚えた。

「・・・・・?」

ポケットの中に手を忍ばせてみれば、何かの角っちょが指先に当たる。

――――そういえば。喧嘩の最中だったから、忘れていた。

露店の男から渡された、立方体の箱

徐ろにそれを取り出し、右手の掌に乗せてみる。


・・・・一体、何だろう?これ。


銀ちゃんに、渡せって――――言われたけど。

同じ様に対になった長椅子に腰掛ける男に、視線を送ってみたが。

先程よりも不機嫌オーラを醸し出され、顔もそっぽを向いたまま。

渡せる、状況では無い。

「・・・・・・・・」

――――開けてみちゃおうカ。どうせ渡した所で、この男の事だから。

こんなモンいるかああ!』と。

怒りに任せて放り投げるか、捨てるだけだろうし。

掌に乗る立方体の箱の蓋を、もう片方の空いた手で開けようとした時だった。

「何だ?これ」

眼前に座っていた男が、上半身を乗り出し。

私が手にしていた箱を、奪ったのは。

その行動に腹が立ち、睨み付けながら右手を差し出す。

「返してヨ!
さっきの露店売りから、銀ちゃんに渡せって言われたけど。どうせ興味ないダロ。だから私が――――」

「・・・・オレに?何で?」

死んだ魚の様な瞳を半眼にさせて、問い掛けて来る。

「何か、お詫びの印って・・・・言ってたアル」

私の返答を無視し、箱の蓋を取ると。中身を、確認し。再度、蓋を閉めた。

そして人の顔を見るなり、盛大な溜息を吐き出す

「・・・・・・」

「―――――失礼アルナ!人様の顔見て溜息吐くとは、どういう意味ネ!」

ちぃっと、大人げ無かったな

何かぼそりと呟いて、立ち上がり・・・・・こちらに向かって来る。

隣に腰掛けたと思ったら、今度は私の目の前で先程の箱の蓋を開け。

中身を、取り出した。

多角形に切り取られた、透明なプラスチックのケースが。

銀髪男の大きな掌の上に、置かれている。

「・・・・・?何ヨ?これ」

指輪

「へ?指輪?」

「っても、玩具みたいだけど」

「――――どして、そんな玩具の指輪を。銀ちゃんに渡せって言ったアルカ?」

露店商の男が何をしたかったのか、さっぱり意味が分からない。

玩具の指輪なんて、この男が貰ったって。どうしようも無いじゃないカ。

「――――――――」

眼前の男は、ケースの蓋を開けて中身を取り出し。

私の左手を、掴むと―――――薬指に、指輪を填めた。

今、そこには。フリーサイズ仕様の、金メッキで出来たリングの土台と

土台の上に置かれた贋物の『宝石(いし)が、これ見よがしに存在を誇示している。

「ふうん。良く出来てるのな〜。てか、お前・・・・指ほっそ〜!」

まじまじと玩具の指輪を見つめながら、感心していたが。

「・・・・銀ちゃん。
おもっくそ、露店商売りの男と同じ事してるアル。何で銀ちゃんは、良いネ?



阿呆か!お前は!オレだから、良いの!


そう言うなり、薬指に納まっていた指輪を外しケースへとしまう。

・・・・つか、何だ?そりゃ。

言ってる事が、矛盾してるじゃねえカ!
ちょっ・・・・・勝手に、取ってしまうなあ!それ私にくれたモンだロ!?返してヨ!」

奪い返そうとするが、のらりくらりと避けられ。

指輪を手にする事が、全然出来ない。

「誰が神楽のって、言った?
これは、銀さんが貰ったもので〜す。それにお前は『指輪』なんて柄でも、ねえだろ?」

――――――ム

確かにそうかも知れないが、何も其処まで言わなくても良いだろう。

「余計なおせ―――――」

「わあった、わあった。いつかお前の『ソコ』に、決心――――付けさせてやかっら」

「え?」


『ソコ』――――――?決心って、何ヨ?


先程の不機嫌オーラは、何処へやら。すっかり機嫌が直った、銀髪男は

したり顔で、指輪のケースを懐に納めると。

私の左手を再度掴んで、己の口元へと持っていく。

夕月を描いていた唇の上下が開き、自身の薬指が吸い込まれて行った。

「おっ・・・・おい!?何するア――――」

綺麗に並んだ歯が、私の指を軽く拘束する。






「今は、これで十分。『本物』はお楽しみに、取っとけ」







薬指の決心






意味不明ですみません。ただ銀さんが、嫉妬する場面を描きたかっただけなんです・・・・・ORZ←キャラが壊れてる。毎度の事ですね。
そんな自分を認めたくなくて、更に意地を張る銀さん・・・・ああ・・・・拝んでみたい。
そして肝心な部分で、鈍感な神楽ちゃんを拝んでみたい。←叶わぬ願望。
最後の場面で銀さんが、神楽ちゃんの薬指を咥えてるんですが。
軽く噛んで、マーキングしてます。此処はオレ以外、NG!みたいな。でも神楽ちゃんは、分かってません。←あれ?
神楽ちゃんの薬指の決心を付けさせるのは、銀さんしか有り得ませんからああ!←落ち着け。
余談ですが実は未来銀神小説にある、「A DETERMINATION OF RING FINGER」も薬指の決心となっております。
とは言っても、内容は思いっきり違うのですが・・・・。

神楽ちゃんが、露天商売りから指輪を填めさせる場面は実体験話です。結婚指輪を買いに来て
ジュエリー売り場の男性店員さんから薬指に填めて貰った時の・・・・・あのいかんし難い空気は。とても辛かった(T▽T)
何故に抵抗しなかったんだ?おれ。←知らねえよ。
この様な駄文を最後まで読んで下さり、真に有難うございました。(誤字を発見したので、加筆修正致しました。2011/10/26)


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