未来予想図 U 後編



なあんて、思いに耽っていたら。

じじいから写真を受け取ると、眼前にいた少女は「きゃっほう」と奇声を上げた。

「銀ちゃん!見て見て!これ6年後の私だって!!」

嬉々としてこちらに写真を差し出され、釣られる様にソレを受け取る。

「―――――――!?」

再び、言葉が喉に詰まってしまう。

―――――つうか・・・・誰?これ?

・・・・・本当に、神楽なのか?

元から美少女だったのは、少なからず認めるが。

この写真を見る限り、美女を通り越して『超絶美女』になっている。

2つのお団子から毀れる髪は、まるで絹糸の様に艶やかで

ただのチャイナ服を、着てるだけなのに。

身体のラインも、凹凸をはっきり浮かび上がらせスタイルの良さが伺える。

正直今をときめかしている、アイドルやモデルよりも。

魅力的で――――尚且つ、魅惑的である。

正直・・・・・結野アナよりも――――。

「――――銀ちゃん?」

オレの態度を不審に思ったのか、横から顔を覗き込まれ。

咄嗟の事に身を仰け反らせ、「うおう!?」と変な声を出してしまった。

その拍子に手にしていた写真を、少女の手に戻されてしまう。

「ふう〜ん・・・・6年後の私って、こんな風になるアルカ」

「ほおおお。偉い別嬪じゃねえか、譲ちゃん。
こりゃあ、6年後―――大変な事になんぞ?

源外じじいも、写真のモデルに感嘆の溜息を吐いている。

「―――――?大変って何ヨ?」

「野郎共が、放っておかねえって事だよ」

「・・・・・意味が分からないネ」

色恋の『い』の字も知らない、純粋培養の少女に言ったって。

通じないのは、百も承知している――――が。

じじいの言った言葉は、あながち冗談話にも取れない。

「まあ、良いアル。――――早速これを、皆に見せ―――――」

大事そうに己の写真を、懐に仕舞おうとしていたので。

慌ててその腕を掴み、「渡せ」と命じる。

「何でヨ?」

当然の、問い掛けである――――のだが。

「良いから!ソレを銀さんに、寄越しなさい!
色んな意味で危険だから、これはオレが預かっておきます!!」

無理矢理といった態で、少女からその写真を取り返す。

「色んな意味で、危険って・・・・・どういう意味アル?」

――――あ〜・・・・もう、ほらな?

お妙とかに、見せるならまだしも。

コイツの事だから、絶対――――くされ縁でもある『真選組』の奴等にだって。

ヅラや・・・・長谷川のオッサン・・・・とにかく神楽に関わってる奴等全てに。

間違いなく、見せる・・・・筈!

―――――そんな事は・・・・絶対に、許さん!

つうか、胸糞悪い!

超絶美女に変貌した、『女』の姿を知ってて良いのはオレだけ。

あいつ等は今の『ガキ』のままの、神楽を知っていれば良いんだ。

「お前に話したって、無駄だから。良いから、銀さんに預けておきなさい」

そう言って6年後の神楽の写真を、急いで懐に仕舞い込んだ。

まだ納得していなそうな少女は、両頬を膨らませながらも。

「何だって言うネ」と、ぶつぶつ文句を言っている。

何時の間にか立ち直ったのか、新八がこちらへ近づいて来た。

「ずるいですよ、銀さん。僕まだ、神楽ちゃんの6年後の写真―――見てないんですけど?」

左手で『あっちいけ』の、ジェスチャーをしながら。

「良いんだよ、見なくて。別に、大して面白いモンでもないから」

「え〜?でも・・・・・」

尚もしつこく食い下がろうとする、ダメガネの肩を。

源外じじいが、背後から叩いた。

「まあまあ。写真は奴さんに、任せておけば良い。なあ?銀の字」

意味心的な笑みを浮かべられ、無意識に顔を逸らし悔し紛れに毒づいた。

「・・・・・・ったく。余計なモン、作りやがって」

「ほお?そうかねえ。大発明と思うんだが」

「未来を知る機械なんて、碌なモンじゃねえよ。――――って事で」

オレは腰に差してある、愛用の木刀を抜き取ると。

写真機目掛けて、思い切り振り下ろした。

ど派手な音を上げて、見事に散乱する元写真機だったモノ。

「うあああああああ!!てめえ!!何て事しやがるんだあああ!!」

「折角の代物があああ」と、じじいは頭を抱えて悲鳴を上げて叫んでいたが。

・・・・・オレは内心、安堵していた。

面白がった神楽が、毎度の如く此処へ訪れて――――未来の自分を撮って来られては。

神楽に対した己の行動が、水の泡になる。

「行くぞ、新八!神楽!定春!」

背後で尚も喚き続ける、じじいの声を聞きながら。

オレ達はその場を、後にした。

「――――大丈夫ですかねえ?源外さん。相当ショック受けてましたけど」

「良いんだよ。もうちっと、世間の役に立つモン作れってんだ」

「あ!そう言えば!報酬、貰ってないじゃないですか!」

はたと気付いた様に、新八が大声で背後を振り向く。

「世紀の大発明品を、壊しちまったんだ。報酬なんざ貰えねえよ」

両肩を思い切り上げて、盛大な溜息を吐く新八。

「別に壊す必要、なかったんじゃないんですか?たかが『未来』の自分が、視れる写真機なのに」

「そういうのは、お子様向けのドラ●モンに任せておけば良いの。
未来の自分を知ったからって、今のオレ等がどうなる訳でもねえだろ?
大事なのは『今』で―――その足で未来を切り開いていく自分

「・・・・・そうですね」




万事屋と志村家の、別れ道に到達すると。

ダメガネは「また明日」と言って、己の家に帰って行った。

従業員兼居候の少女は、定春の背に乗って鼻唄なんぞ歌っている。

・・・・・ったく。人の気も知らねえで。

ようやっと、『万事屋』に着いたオレ達は。

居間に設けられている、長椅子へと身を沈める。

習慣でテーブルのリモコンに手を伸ばし、電源をオンにしたら。

ブラウン管には、結野アナが明日の天気を予報していた。

テレビに映ったのが、結野アナだと知った少女は。

面白くも無い顔を浮かべて、「風呂に入って来る」と言い出して。

居間から浴場へと、足を動かした。

オレはそれを、「ああ」と軽く聞き流し。

無意識に右手を懐に、持って行く。

あんなに大ファンだった、結野アナが笑顔を向けてくれているのに。

どこか心は、上の空状態。

そっと例の写真を取り出し、改めて凝視する。

「―――――マズイだろ。これ・・・・本当、反則だわ

写真に写る超絶美女の笑顔に、オレの心は相当参っていた。

あの娘が此処までなるのに、後・・・・6年か。

「理性、持つかね・・・・。いや――――持ってくれなきゃ、困るんだけどね」

源外じじいからの、報酬なんざ・・・・・。

この写真で、十分お釣りがくらあ

さて?この写真を、何処へと隠そうか?

それとも肌身離さず、持ち歩いているべきか?




長い様な短い様な。

未来予想図の写真を。





※ドリカム2rdアルバム「LOVE GOSE ON・・・・・・」をお題にした、銀神&金神小説が終了致しました。
現作品を含め、過去作品でも無理矢理感が否めなかったり・・・・頭を抱えながらもキーを打っていたのが
懐かしく感じられてしまいます。
源外じいさんは、こんな発明しねえだろうなあと思いつつ・・・・書いてしまいました(T▽T)
新八君には、可哀想な事をしてしまいました(汗)新八君ファンの皆様、申し訳ありません!
亀並みですが次回からは3rdアルバム「WONDER 3」を題材に掲載していきたいと思います。
この様な駄文作品を読んで下さり、真に有難うございました。


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