PASS WORD 神楽Ver

・・・・何をしようとしているのだろうか?目の前にいる男は。
普段の様に気だるさを醸し出してはおらず、死んだ魚の目に鋭い光を帯びさせて。
私を壁際まで押しやり、両腕で囲いを作っている。

「ぎん・・・ちゃん・・・・?」

訳が分からないので、とりあえず男の名前を口にする。
けれど―――――沈黙状態のままで、私を見つめて。

もう一度名前を呼ぼうとした瞬間、何かが唇に触れた。
・・・・それが彼の唇だと理解したのは、視線が合ってから。

「ぎ・・・んちゃ・・・・」

恐らく今この時程、間抜けな表情を浮かべているのは間違いなく。

――――
だって・・・銀ちゃんが・・・私に?
――――
キスをした?

自分はポリゴンでもロリコンでもないって・・・散々その唇で言っていたのに。
嘘・・・・デショ?

――――何の・・・冗談ネ」

無意識に出てきた言葉―――それでも銀ちゃんは、真顔でこう言った。

「冗談なんかじゃね−って言ったら、どうする?」

そう言って着物の衣擦れの音をさせながら、左手で私の頬に触れる。
蛇に睨まれた蛙の様に、動けない――――
目の前にいる男は、私の知らない人物の様に思えた。

「・・・・銀ちゃんが好きなのは――――大人で綺麗な女性でしょ?私は全く正反対アル」

頬に触れていた指が線をなぞり、顎で止まる。
そして顔を耳元まで近づけ、低い声で優しく囁いた。

「       」

―――――
身体が痺れる・・・・。

その言葉に自然と、両目が大きく見開いて。
私の防御本能は、崩れ落ちた。
顎を持ち上げられ、再び唇が重なる。

先程とは違った、深い――――堕ちて行く様な。
あの言葉を何度も・・・何度も囁かれ、離れては重ね合わせて。



頭の芯が弾け飛ぶ様な――――甘い感覚。


銀時Ver

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