LIP STICK 後編 神楽ver
だが、そんな気持ちを他所に。
銀ちゃんは、レクチャーをし始めた。
「良いか?口紅ってのはな。ただ唇の輪郭をなぞれば、良いってもんじゃねえんだぞ?
ほれ、少し口を開け。まず、下唇の―――――」
説明をしながら口紅を持った手が、ゆっくりと輪郭をなぞり始めた。
「本当なら、紅筆があれば・・・・もっと綺麗に――――」
何度も紅を往復させ、一旦顔を離し。
「よし、下唇はこんなモンか」と、一人納得。
再び顔を近づけ「次は上唇だが」と、眉間に皺が寄る。
「これが結構・・・難しいんだよなあ。
まず―――上唇の端から、食み出さない様に・・・縁取りしながら天辺に向かって――――」
慎重に右手を動かしながら、真剣な眼差しを浮かべ。
何度も私の顎を動かし、角度を変えたかと思ったら。
「おっし」と頷き、反対側に取り掛かった。
―――――何か・・・不思議アル。
こういうのって、滅多にない気がする。
両目を瞑って、されるがまま。
私の唇は銀ちゃんの手で、生まれ変わろうとしていた。
時折指先が、縁を拭っていたが。
口元をティッシュで、軽く押さえた感覚。
「――――――おっしゃ、終了!オレって器用だわ〜♪」
閉じていた両目を、ゆっくりと開けて。
「おら、見てみ?」と手鏡を渡され、己の顔と対面する。
「――――――――」
紅い口紅が、私の唇を強調し。
素顔の私よりも、数倍大人っぽく見えた。
・・・・・これが――――化粧の力なのカ。
銀ちゃんは、手鏡を横から覗き込み。
「-―――――女は髪型と化粧で変わるって言うけど。ホントその通りだよなあ」
「・・・・私、変わった?」
この問い掛けに、銀ちゃんは鏡から視線を逸らして。
右手の小指で、耳穴を穿り始めた。
「――――まあ多少は・・・変わったんでない?オレ的には、淡い系が似合うと思うけど」
「大人っぽい?少しは、銀ちゃんに近づけたカナ?」
耳穴を穿っていた小指を取り出し、息を軽く吹き掛けると。
「・・・・ば〜か。ガキはガキらしく、背伸びしねえで。
今持ってる『美しさ』を、大事にしなさい。
嫌でも大人になって、化粧しないといけない時がくんだから」
――――――と、私の頭を軽く叩くと。
背伸びをして、居間を後にする。
その後ろ姿を見つめ、再び手鏡に視線を戻した。
『背伸びはするな』
確かに・・・・そうかもしれないけど。
でも・・・・でもね?
外見だけでも、良いから。
早く―――――大人になりたいんだヨ。
・・・・少しでも、銀ちゃんに近づきたいから。
※・・・・・先に謝っておきます。
すみません・・・・ORZ
口紅の工程、全く存じておりません。
スッピンばかりで化粧なんて、ここ数年してやしねえ。←女捨ててます。
記憶の片隅で、確かこんなやり方だったと。
勝手に文字に、してしまいました・・・・。←駄目じゃねえか。
この様な駄文に目を通して下さり、真に有難うございました。