MY ONLY WOMEN
昼と夜と。
『別の顔』を合わせ持つ。
それが、この『かぶき町』。
昼間は若者達を中心とした、繁華街が。
夜になると、一変し。
大人達の『楽園』となり。
眠らない街、『不夜城』として生まれ変わる。
飲み・語り・快楽・豪遊。
それらを与え求める、多勢の男と女。
そして。
今現に、『此処』にいるオレも。
当然の様に、そこに含まれる訳だ。
癒しと温もりを求める、『女性達』に。
望まれるまま、与え続ける。
ホストクラブ開店まで、後一時間弱。
既に入店し終え、準備を済ませ。
本皮張りの、ソファに腰を据えていたら。
背後から、声が掛かった。
「金さん。準備済んでるんですか?だったら、店内清掃手伝って下さいよ」
新八こと、『ケツ顎新八』。
和製ホストのNo.1だったコイツも。
時代と共に、その名声を無くし。
今ではオレと同様、神楽に身を拾われ。
新たな人生を、歩み出している。
「―――ああ?何だってオレが。てか、何故お前が掃除?他の奴にやらせろよ」
「内勤の人達も、今忙しいんです。事務作業等に追われてて」
―――――そういやあ、店内がやけに慌しい気がする。
几帳面に折り畳まれた、タオルを手に。
念入りにテーブルを拭く、新八に問い掛けた。
「・・・・今日、何かあんの?」
手を止めて、両肩を竦め。
「やれやれ」と言った態で、息を吐く。
「カレンダーの日付、ちゃんと見ました?今日は『オーナー』の来店日ですよ」
――――『オーナー』。
・・・・って事は。
「・・・神楽が、来んのか」