それだけ言うと、ドアの向こう側に消えた。
アイツの、香りが残る。
ドアに向かって、一言。

―――もう少し他に、言葉くれても良いだろ」

オレの気持ち。
本当は、気付いてる癖に。

――――
と。
奥の部屋から、新八が現れ。

「・・・あれ?オーナーが来てるって。聞いたんですけど」

「お前が奥で――――悪戦苦闘してる内に、事務所に戻られましたよ」

周囲を見渡せば。
オレ等以外の、ホストやヘルプ達も準備万全。

店内は先程よりも、騒がしさを増し。
時計の針が、開店時刻を示す。

と・・・・・同時に、癒しと温もりを求め。
店に訪れる、『お客様』達。

そんな彼女達と、時間を共にしながらも。
脳裏に浮かぶのは。
己の胸に堂々と居座る、女の事。

自分の『領域』に。
決して、踏み込ませようとしない。

取り巻く全てが、謎に包まれた女。
掴めそうで、掴めない。

そんな、存在。

けれど、だからこそ。
心底『手に入れたい』と、思わずにはいられない。


オレの、『唯一の女。』


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