SKIP BEAT 後編



リビングに戻ると。
ソファの上で、丸まった定春。
どうやら、眠りについたらしい。

軽く頭を撫でようとした時。
また、インターホン。

「――――――」

玄関に向かい、ロックとチェーンを解き。
ノブを回し、開けば。

えんじ色のシャツに、黒のスーツを着込んだ。
金髪の天然パーマを持つ、男の姿。

「――――よお」

そう言って。
右手を上げて、挨拶をして来たが。

「――――どうぞ」

冷めた対応で、金時を迎え入れた。

しかし。
何ら応えた様子も、無い男は。
片方ずつ革靴を脱ぎながら。

「お邪魔。・・・・へえ広い。以前から、豪邸に住んでるとは聞いてたけど。すんげえな」

「こんなの、豪邸とは言わないわよ。ただの、3LDK」

「ただのって・・・・お前。その割りには、豪勢じゃねえ?」

忙しなく視線を、周囲に送る金時を。
とりあえず、リビングへと招き入れ。
ソファに座らせる。

「――――そこ、定春が寝てるから。起こさないで」

「へいへい。・・・気持ち良さそうに眠ってらあ。
そらそうか。こんな本革ふかふかの、ソファなら睡眠も快適だ」


静かに腰を下ろす、金時に向かって。

「・・・・今日、仕事だったんじゃないの?スーツ姿のところをみると」

「―――ああ。本当は『同業回り』だったんだよ。知ってんだろ?
ウチの店の界隈に、新規の店がオープンしたの」


「ええ、知ってるけど。―――行かなくて良かった訳?」

金時は、両目を瞑り。
右手を左右に振った。

「平気、平気。オレの代わりに、新八が行ってから。『太客』の一人連れて」

「・・・・まあた、押し付け?面倒になったんでしょ?」

「ちげえよ。オレには―――正当な理由があるし」

「正当な理由?」

問い掛けると、笑みを浮かべて。

その笑顔で、一体何人の。
女性達を、虜にしたのかしらね。

「『お前に会う。』これが、理由」

「・・・・それで?満足した?」

返答は無く。
ソファから、立ち上がり。
夜景が広がる、窓へと歩き出す。

「は〜・・・・こりゃまた等身大のデカイ窓。此処から素敵な夜景を、独り占めですか」

「――――返事を貰える?」

窓辺に佇む、背中に声を掛け。
ソファに、腰を沈める。

「その前に・・・・聞きてえ事がある」

振り向きもせず。
急に、真面目な声。
身に纏う空気が、一転した。

「・・・・何?」

右足を組んで。
少し湿った髪を、梳きながら。


窓に向かったままの。
男の言葉を、待つ。

「お前一体、何者なんだ?」

「・・・・・・・・・」

「この前偶然『事務所』の前を、通り過ぎ様として。
ビル前で『いかにも』って感じの男共が、何やら話し込んでた。
喋ってた言葉が、中国語だったから。言ってる意味も、良く分かんなかったが」


「・・・・・・」

「お前の名前が、何回か会話に出てて。更にたまたま。
目についた・・・・手に忍ばせてあった、黒い『物』。――――恐らく、『銃』だろうな」


「・・・・・・」

「『銃刀法違反』が定められている国で。何故あいつ等は、『それ』を持ってた?
何故、お前の名前を出て来るんだ?」

一気に捲くし立てる様に、喋り終わると。
振り返り、私の近くまで足を進めて。

私を避けるように、ソファの背に両手を置いて。
逃げられない様、囲いを作った。

「答えろよ、神楽」

真剣な表情。

「・・・・・・・・」



どうして、そんなに私の心を乱そうとするの?



お願い、どうか。
立ち入らないで。
踏み込んで来ないで。

「・・・・答えてくれねえのか?」

そう言って、金時は。
囲いにしていた、右腕を解き。
私の顎に手を掛け、持ち上げる。

「オレはお前の、全てを知りたいんだよ」

整った眉の間に、数本の皺を浮かべ。
真剣な眼差しで。
――――見つめられて。



私の心臓は。
跳ねる様に、脈を打つ。
弾けそうなくらいに。



「・・・・・・・・」

でもね、金時。
私の言葉を聞けば、貴方は。

「・・・・きっと。後悔する事になるわ」

両目を瞑り、囁けば。

「知らないまま、後悔するよりはずっと良い」

落ち着いた、優しい声が耳に届く。

「・・・・馬鹿よ、貴方は」

「―――愛しい女の為なら、馬鹿にでも何にでもなるさ」

男はそう言うと。
私の身体を引き寄せ力強く、抱き締める

その『暖かさ』に、身を委ね。
唇を強く、噛み締めた。

・・・・金時、貴方は。

『光』の当たる、世界から。
『闇』の世界に、身を投げようと言うの?




※久しぶりの更新です。夏の暑さにやられて、へばってます・・・・・・ORZ
金神小説をUPしてしました・・・・・が、これまたやっちまった感があります。
このサイトの金時さんは、神楽ちゃんがマフィアの首領とは知らない設定になっております。←良いのか?
それを敢えて、自ら足を突っ込む・・・・・と言う具合でしょうか。←何だそりゃ?
この様な駄文に目を通して下さり、真に有難うございました。


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