IT´S SO DELICIOUS 前編
――――満員電車は嫌いだ。
狭い鉄の箱に、これでもかと詰め篭められて。
身動き一つも出来やしない――――。
降車駅までそれを、ずっと耐えなきゃいけないのだ。
先生の家、泊まんなきゃ良かったなあ・・・・。
いつもなら愛車のべスパで、高校近くまで二人乗りで。
他愛無い話をしながら、前方から吹く風を受けるのが結構好きなのに。
――――よりによって、出発前。
「悪ィ。どうも『コイツ』、イカレちったみてえだ。
エンジンいくら吹かしても、かかりやしねえ。って事で、今日は電車だな」
愛車が動かなくて、急遽電車通学&通勤する羽目になってしまった。
ブレーキ掛かったり、カーブに差し掛かれば。
周囲の人達との、おしくら饅頭が開催されて肺と胃が圧迫されそうになり。
途中駅で通勤・通学者達が降りたとしても。
電車を待ちかねた乗客達が、こぞって乗り込んで来る。
――――後、どのくらいだろう?
先生とは乗車した瞬間、後ろの乗車客達に押されて―――離れ離れになってしまったし。
入り口の手摺に?まっていた私は、車窓から流れる景色を見つめていたのだが。
密閉された空間で、空気を求めるかの様に。
私は思わず溜息を吐きながら、天井を仰いだ。
――――その時。
・・・・・・?あれ?
上半身より下の方に、違和感が生まれた。
・・・・・・何か・・・・・モゾモゾしてる気が・・・・・。
鞄か何かが、当たってるのかな?
そう。丁度お尻辺りに、物凄い違和感を感じている。
―――――ひょっとして・・・・・痴漢?
でも後ろを振り向こうにも、この状態じゃ難しいし。
手摺を強く握り、どう行動しようかと躊躇していたら。
「!?」
私の予想は見事に、的を射ていた様だ。
鞄じゃない――――明らかに、誰かが私のお尻を触っている。
動かせる範囲で、視線を巡らすも。
サラリーマンやら、学生達が我関せず状態で棒立ちのまま。
――――誰!?断りも無く、人の尻触りやがって!!
恐れどころか怒りが、どんどん湧き上がってくるのを感じ。
こういった時に一番傍にいて欲しい人物は、この車両の何処かに消えちゃったし。
こうなったら大声で、『痴漢!!』と叫んでやろうかと。
―――――息を、吸い込んだ瞬間。
耳元で、「か・ぐ・ら」と囁かれ。
聞き慣れ過ぎた低音が、私の鼓膜を刺激した。
肩越しに振り返り「――――っ!?先生?」と、思わず私も囁き声で返答。
何時の間に、背後にいたの!?と、問い掛けたかったのに。
禁断の恋人は、左手の人差し指で己の口元に持っていくと。
『静かに』と、ジェスチャーを示した。
「し〜っ!折角、美味しいシチュエーションなんだから♪」
ご機嫌のニュアンスが、含まれた口調だが。
・・・・・・え?美味しいシチュエーション?
眉間に皺を寄せ、首を傾げた瞬間。
再度お尻が、撫でられる。
「――――――!!」
まさか・・・・この手って!
驚愕する私の表情を見て、背後の男はにっこりと笑顔を向けた。
―――――って言うか!何考えてんだヨ!!
こんな人が多い場所で、不埒な事しようとしやがって!
だが担任はお構い無しに、私の両房の感触を楽しんでいる。
置かれた掌で上下に何度も、往復され――――思わず背筋が、震えた。
・・・・ちょっ。これ以上――――!
もう一度振り返り、抗議しようとしたが。
突然。
スカート生地上の感触から、ショーツ越しの感触に変わる。
瞬間、身体が硬直した。
まさか・・・・スカート、捲られたあ!?
私の杞憂を他所に、担任は「大丈夫。見られやしねえよ」と。
再びあの囁き声を発し、喉元で笑った。
先程と同じ様に、掌を這わせて感触を楽しみ出す。
昨晩・・・・・あんだけ、私を啼かせたくせに。
まだ、物足りないと言うのか?
掌全体から、指先だけの感触に変わり。
つうっと下から動かされ、思わず身を捩ってしまった。
「あんまり動くと、怪しまれっぞ?」
背後の男から、笑いの含まれた言葉を言われて――――誰の所為だと言いたくなる。
本当に周囲に気付かれていないか、視線を動かせる範囲で巡らせば。
幸か不幸か――――殆ど、後頭部しか見えない。
とはいえど、やはり場所が場所なだけに。
落ち着かない以前に、勘弁して欲しい気持ちが上回る。
そんな私を他所に、担任の手はどんどんエスカレートし始めた。
「!?」
後ろで漂らせていた手を、ゆっくり前へと移動させたのだ。
ええ!?マジで!?―――・・・・本当に――――!
この行動に肩越しから、視線で牽制したのだが。
背後の男は知らぬ存ぜぬを決め込み、私の方を見ようとしない。
それどころか筋に沿って、指一本で何度も上下に動かして来る。
たまに指先が一番敏感な部分に当たるので、声が出そうになってしまいそうだ。
それこそマズイ・・・・声だけは、決して出してはいけない。
無意識に手摺を掴んだ手に、力を篭めてきゅっと口元を引き締めた。
――――その瞬間。
ついっと動いていた指は、敏感な部分で止まり。
今度は其処を集中的に、指の腹で優しく押し回し始められた。
徐々に湧き上がる感覚に、両目を瞑り必死で耐える。
円を描く様に、ソフトに攻められ続け――――閉じていた口が半開きになってしまう。
―――――あっ・・・・ん。
声を表に出せるなら、きっとこんな声が出てくる筈。
けれどぎゅっと口を閉じて、ソフトな愛撫を受けていたら。
じんわりと己の蜜が、湧き出てきてるのを実感。
両膝も僅かに震え出したが、必死に己の態勢を保ち続ける。
攻め続けていた指が止まり・・・・一旦離れたと思ったら。
今度はショーツを退かして、直に指が侵入して来た。
「――――あっ」
思わず声が上がってしまい、手摺から手を離し慌てて鞄の中に手を入れて。
携帯を探すと言う演技を、行ってしまった。
周囲の人から見れば、焦ってるんだなくらいにしか見られないだろう。
ちらりと横目で、担任を睨んでやれば。
極上スマイルで、こっちに微笑みやがった。
――――かああああ!!めっさムカつくんですケド!
人をこんな目に遭わせておいて、何その余裕な態度はあ!?
・・・・怒りMAXだった、私だったが。
次の瞬間、その感情は一気に吹き飛ばされる羽目になる。