LOVE AFFIAIR 中編



あんの馬鹿―――――何処に行きやがったんだ?
確かにこの状況で見つかるのは、非常にマズイが。


「ああ、そういや。便所行くから先戻るって、言ってたんだよなあ」

空笑いをし、右手を振りながらその場凌ぎ。
すると志村姉が、再び毒を投下。

「先生?自作自演程、空しいモノって無いと思いますけど」

「・・・・・志村。お前ね、一度。男の怖さを味わってみる?
今日と言う日を、忘れられない日に――――」


「誰がさせるかあああああ!!例え世間が許そうが!
あんたみたいなマダオ教師、僕は断固拒否しますからね!!
あんたの教師と言う肩書きを、奪ってでも!」


・・・・・いやいやいや。弟よ。
オレだって選ぶ権利はあるんだよ――――つうか、安心しろって。
この命尽きようが、お前の姉とランデブーなんかしねえっての。
それにね?君等には言えないのだが、オレは今遅かりし『青春』を満喫してるんですう。

「――――はいはい。そんな事よりも、夏休みだからって。いつまでも羽伸ばしてんじゃあねえぞ?
未成年者の外出は、21時まで。とっとと、お家へ戻んなさい?補導されても、知んねえぞ」


至極尤もらしい、台詞を口にして。
この危険区域から、少しでも追い出そうとする。

担任からの忠告には、流石に逆らおうとせず。
「それじゃあ」と、帰路に向かう群衆に混じりながらこの場を去って行った。
姿が見えなくなったのを確認し、身体全身で一息付く。

しかし問題は此処からだ――――あんの馬鹿娘、何処に行きやがった?
首を左右に動かし、幾分見渡しの良くなった周囲に目を配らせて。
・・・・・それらしき人物を探してみるも。

「・・・・いねえなあ」

眉間に皺を寄せながら、ハーフパンツのポケットに偲ばせてあった携帯を取り出す。
発信履歴ボタンを押せば、一番最初に出てくる漢字『二文字』。
それを確認し、通話ボタンを押した。

もしかしたら通じないかも知れないと、頭の奥で警鐘を鳴らしたが。
意外にも3コールで、コール音は途切れる。

『はい?』

「はい?じゃねえよ!何処にほっつきやがってんだ、てめえは!?」

人の心配を他所に、能天気な返答。
怒りと安堵が同時に、やって来る。

『―――――今ですか?波打ち際にいますよ』

波打ち際の言葉に、速攻で視線を滑らすも。

「いねえじゃねえか。何処だよ?」

『ほらさっき、会場に辿り着く間――――ちょっとした、草で出来た脇道あったじゃないですか。
その奥にいます――――驚きですよ!ちょっとした、浜辺なんです♪』


・・・・脇道―――――?って。
ああ・・・・確かに、あった様な。

――――ったく、何時の間にそんな所に足運んでんだ。
受話器越しに、半ばわざとらしく溜息を吐いて。

「わ〜った。今から行くから、そこ動くんじゃねえぞ?」

『は〜い』

電源ボタンを押し、携帯をしまうと。
右手で少し汗ばんだ頭を掻きながら、オレは会場となった浜辺から足を動かした。






先程偶然見つけた、草叢の脇道は。
膝丈くらいあり、それらを?き分けて奥へと進む。
・・・・・しかしホントに、こんな奥に浜辺があんの?

半信半疑で両足を動かして行くと、鬱蒼と茂った草木達とご対面。
もしかして、これ超えろって事っすか。
自分の目線まである草木達を、両手で押し開ければ。

「―――――――――」




眼前に広がる、漆黒の海と空には存在を誇示する恒星達。

其処に一人で屯す様に、少女が両足を波に浸して突っ立っている。

多少枝に腕を引っ掛けながら、ようやっと神楽の場所へと辿り着いた。

「せんせ」

オレの姿に気付いた娘は、振り向き様右手を上げて大きく振る。
近づき片手で、軽く頭を叩いて。

「バカヤロ。一人で姿、晦ますんじゃねえっての」

「だって――――あのままいたら、絶対マズイ事になったデショ?
私と花火大会見物に来てたなんてバレたら、失業しちゃうもんネ」


白く細い二本の足元で、しきりに波が泡を立てては。
上下に行ったり来たりしている。

「――――なった時は、なった時だろ?ったく、面倒臭せえ世の中だよなあ。
教師は生徒と恋愛するなって、誰が何時決めたんだよ」


「仕方ないよ。こんなご時勢だし」

タバコを咥え浜辺に腰を下ろし、2時間ぶりの紫煙を味わう事にする。
・・・・・・ああ、やっぱり――――うめえ。

海風が汗ばんだ身体を、幾度と無く遮り。
湿度をあまり含まない、心地良さを感じさせた。



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※背景素材は WEBstudio310様が運営されている サイト名『海の素材屋』様よりお借りしました。


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