『こういう運命だった』って、どんな運命だよ。
対峙しているオレ達の周囲では、未だに爆音・悲鳴が飛び交う。
目の前に立ち尽くして笑顔を浮かべている、少女は。
普段通りのチャイナ服・お団子頭に愛用の番傘を携えて。
――――以前と一つだけ違うとしたら。
蒼を強調した両目が。
今は―――――赤く染まり始めている。
オレの視線に神楽は気付いたらしく。
人差し指で自分の左目を指して。
「これ?私も見た時は―――驚いたヨ」
・・・・首を軽く傾げながら。
「『夜兎』として、覚醒する前兆らしいネ」
淡々と語る口調は、至っていつもと一緒で。
・・・・・城内の役人共を、手に掛けたとは到底思えなかった。
「――――自分の血と、闘うんじゃなかったのかよ・・・・?
飲み込まれない様に・・・・必死で頑張ってきた時間は、お前にとって無駄だったのかよ?」
変わりたいって自分を変えたいって、あんだけ望んでいたお前が。
―――――今じゃ『殺戮者』と、成り代わっている。
「・・・・・・・・・」
何でそんなに、落ち着いた表情してんだ。
何でそんなに、両手を赤く染めてんだ。
「答えろよ。神楽」
「―――――闘ったヨ?湧き上がって来る、『衝動』も押さえ込んで。銀ちゃん達と一緒なら変われると信じて。
・・・・でも―――思った以上に、私は弱かったネ。聞こえるの。『闘え』・『殺せ』・『血を飛び散らせ』って。
―――実感せざるを得なかったヨ。・・・・私はやはり血と闘いを好む『種族』なんだと」
右手で持っていた番傘を、ゆっくりと構え出し。
「―――だから・・・・」
眼が鋭く光る――――。
傘の切っ先を向けて、思い切り跳躍し出し。
「例え―――銀ちゃんでも、『倒す』ヨ」
身体を反転させ、切っ先を避けて。
第二の攻撃に、咄嗟に愛用の木刀『洞爺湖』を取り出し応戦する。
「――――やめろ!神楽!オレはお前と闘いたくねえんだよ!」
「何を甘い事ほざいてるカ。もう私は『万事屋』の神楽じゃないアル。
お江戸を『殲滅』から―――街を・・・救いたいなら――――」