『とどめを』

そう言いてえんだろ?分かってんだよ、んなこたあ。
けれど―――――共に、時間を過ごして来たお前を。

どうして手に掛けれるよ?
『仲間』として、接して来たお前を。
どうして簡単に、殺す事が出来るよ?

番傘と木刀が、一歩も退かずに。
交差を掻いて、微かに震える。

「・・・・どうしたアル?――――本気を出さなきゃ―――

対面していた神楽の2つの瞳が、大きく開かれたと同時に。

―――――――――殺されるヨ?」

木刀を跳ね除ける様に、力強く番傘を振り上げた。
押された身体は、床に二つの線を描いて後退する。

傘を閉じたかと思うと、頂点をこちらに向けて。
聞き覚えのある、金属音をさせた。

「私――――幸せだったアル。『故郷』から『地球』に来て。
銀ちゃんや新八に姉御・・・いろんな人達に出逢えて。
とっても、楽しかったし嬉しかった」


邪気のない笑みを浮かべながら、神楽は語る。

「冷え切った心に、暖かな光をくれた。・・・でも。そんな世界を、私が」

一瞬だけ傘が揺れた―――――――
切っ先から火を吹く、銃弾達。
どうにか全弾を右往左往に避けて、片膝をつき少女に視線を戻す。

「壊すんだよネ?」

そんな寂しげな顔を浮かべるなら、こんな事やめれば良いじゃねえか!

「『こっち』に戻って来い!神楽!今ならまだ――――――

「間に合わないヨ、もう」

自由の利く左腕を、オレの方へと差出し。

――――見えるデショ?赤く染まったこの手は――――拭い去れないネ。

私・・・いろんな人達を手に掛けた」

――――かぐ」

近づこうとするのを拒否し、再び銃を構える。

「だから・・・銀ちゃんに、幕を下ろして欲しいアル。私こう見えて小心者ネ。
自ら命を絶つ事出来ないヨ」

赤み掛かった瞳が、少しだけ潤んだ気がする。

「『夜兎』として覚醒した私を―――その手で」

そんな事・・・・出来るかよ!



※何だかどんどん、深みに嵌っている気が。
この先更に話は暗くなると思います。

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