眼前の男は声を掛けようとしたけど、「有難う」の言葉で遮ぎって。
「私にこんな気持ちをくれて、有難うアル。『初恋』って言うんだロ?」
そう。初めてくれたこの想いを――――伝えたかった。
分かってるヨ?銀ちゃんが私に対して、そんな感情を持ってくれない事も。
保護者兼父親みたいな存在で、いつも接してくれていたから。
娘や妹の様に『大切』にしてくれていた事も、十分感じてた。
『初恋』は実らないって言葉を。
どっかで聞いた事がある・・・・ホント、その通り。
この先きっと銀ちゃんは、素敵な女性と出逢うんだよネ。
――――ひょっとしたら身近にいる『姉御』や『さっちゃん』かも知れない。
うん・・・銀ちゃんが――――幸せになってくれるんなら、とても嬉しいヨ。
それでも・・・・どうか。
『私』という存在がいた事を、忘れないでいて欲しい。
心の隅に置いておいて、貰えるだけで良いから。
「――――――」
ああ・・・まただ。
身体の奥底から、私を支配し始め様としている。
心が・・・・身体が。
『血』を『戦闘』を望み始めている。
無意識に動く、右腕が。
番傘の切っ先を、目の前の男に向ける。
殺したくないのに。
ホントは―――――傍に戻りたいのに。
あの楽しかった日々へ、還りたいのに。
全てを無にして。
・・・・・銀ちゃんの事――――忘れたくないアル。
どうか・・・・意識がはっきりしてる間に。
『神楽』のままでいる間に。
――――その手で・・・・眠らせてヨ。
切実な思いを込めて、銀ちゃんを見つめていたら。
銀髪の男は握っていた木刀を、床へと放り投げる。
「・・・・・!?」
木刀は円を描きながら私の足元に辿り着いた。
驚愕した私を見つめて、銀髪の男は信じられない事を口にする。
「殺れ。オレを」
殺れって・・・・・銀ちゃんを?
「・・・・。何を言って―――――」