『好きだった』と、突然の告白。

信じられない自分がいて。
コイツがそんな風に、オレを見ていたなんて。

いつも毒舌を吐き・大量に飯を平らげ・酢昆布を齧り。
本能の赴くまま、遊んで・寝て・食って。

――――――『色恋』のいの字にも、無縁そうな奴だったのに。

「初恋」と口にしたお前は、どこか悲しそうで。
オレが神楽を、『対象』として見ていないと。
・・・・承知しているかの様にも、見えた。

実際に―――――見ていないのか?と問われれば。

「見ていない」と。

普通ならそう答えるだろう。10以上離れた、『ガキ』だし。
だが。新八と同様に・・・・自分の中に居座り続けて来た、乳臭い酢昆布娘。

『好き』とか『愛してる』とか。
そういう言葉で・・・・簡単に割り切れるモンじゃなくて。

じゃあ、一体何だ?と聞かれたら。
これが恋愛感情かどうなのかも、分からない。
ただ単に『仲間』とか『腐れ縁』とかなのかも知れない。

それでも――――オレにとって、神楽は『大切な存在』である事に変わりない訳で。

何とも思ってなけりゃ、今現在こうして。
コイツを止めようなんて、思わないだろう。
『戻したい』なんて、願わないだろう。

――――――何よりも『オレの手で死にたい』と言う、コイツの馬鹿な望みを。
捻じ伏せてやりたい。

―――――――っの!!」

オレの頭上で刀と傘が、震え出す。
力任せに跳ね除ければ、神楽は軽々と一歩退く。

絶対にオレはお前を―――――殺さない・死なせない。

欠けた月を背後に、立ち尽くす神楽は。
今にも儚く・・・・・・消え入りそうで。

先程よりも紅くなった、2つの瞳がオレを捉える。
苦悶な表情を浮かべて。
両肩を上下させ、荒々しく呼吸しながら。

「タイム・・・・・オ−バ−・・・・ヨ。銀・・・ちゃん。」

そう言葉にした瞬間―――――神楽の瞳は、完全に紅色に変わった。



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