その途端、背後に気配。
「―――――!?」
振り向けば―――――禍々しい殺気を迸りながら神楽が、遠心力を利かせ傘を振る。
――――早い。
間一髪で身を避け、床に転がった。
が―――――立て続けに、連撃が繰り出され。
転がり続けるオレの後を、攻撃で出来た穴が煙を上げていくつも出現した。
隙を見て立ち上がり、態勢を整える。
「―――――っ!神楽!」
必死で名前を呼び掛けてみたものの、応答は無く。
感情も何も篭っていない―――――無表情を浮かべ。
紅い・・・・2つの瞳は、瞳孔を開き。
容赦のない攻撃を、オレに対して仕掛けて来る。
改めて『夜兎の力』に、辟易せざるを得ない。
『戦闘慣れ』している上に、『怪力』・『素早さ』・『スタミナ』が上乗せされて。
正直防戦一方のままでは、こちらが根をあげそうだ。
番傘を構えて、突進して来る神楽を。
刀で受け止めれば。
両腕に伝わって来る、重い衝撃。
「―――――のやろっ!」
渾身の力を振り絞り、愛用の傘を弾き飛ばす。
白く細い両手から放たれたそれは、大きく放物線を描き。
少し離れた神楽の背後で、床に着地した音が聞こえた。
武器を失ったコイツが、どう出てくるのか。
固唾を呑んで、行動を見守る。
すると今度は――――後転し、死体の横に転がっていた刀を握り締めた。
構える訳でも無く・・・・右手に無造作に持ったまんま。
だと、思ったら。
「―――――な!?」
一気に間合いを、詰められて。
胸倉を掴み、床に押し倒され。胸部を起き上がれない様、右膝で押さえられる。
「ぐっ・・・・!」
左手は、顎を捕らえ。
冷えた瞳が、オレを見下ろして。
ゆっくりと刀を持った右手が・・・・上げられていく。
月光を受けた刃は、放射状の光を帯び。
・・・・・そのまま―――――振り下ろされ様としていた。