―――――しまっ・・・・!!
咄嗟に左足を後退させて、深手を避けたが。
左肩から右に、袈裟斬りを受け。
一張羅が綺麗に裂け、切り口からは血が溢れ出す。
「―――――っ!!」
右手で肩口を押さえれば、ぬるりと己の血の感覚。
痛みを堪えて、神楽に視線を移せば。
ゆっくりと、刃を左手でなぞらい。
オレの血が付着した、その手を。
『恍惚』の表情を浮かべて、眺めた。
――――――『血に溺れる』。
そんな言葉が、脳裏に浮かぶ。
少し動かしただけで、激痛が襲い。
傷口から左腕に、血は伝い・・・・雫となって床に落ちる。
「・・・・・・・・」
屈託の無い笑顔を、浮かべる表情を。
『銀ちゃん!』と。
甲高い声で、オレの名前を呼ぶその声を。
―――――見る事も、聞く事も――――・・・・もう出来ねえのか。
不意に・・・・脳裏に蘇る、あの告白。
『好きだった』。
・・・・どうして、こんな時に言ったんだよ。
『悲しげに笑った』神楽の顔が、鮮明に思い浮かぶ。
・・・・お前にそんな顔、似合わねえ。
―――――『血』と『闘い』から離れろ。
そして。
――――もう一度。
『笑顔』を。
いつも喧しい程隣にいて、オレに向けていたあの『笑顔』を。
「・・・・見せろよ・・・。馬鹿ヤロ−・・・・・」
―――――――。
コイツが、オレの隣にいて。
笑っていてくれれば、それで―――――。
オレってやつは。
こんなに未練たらしい、生き物だっただろうか。
神楽に声が届かないと、頭で理解してるってのに。
心底願うのは、ひとつだけ。
「――――お前の笑顔が・・・・見てえよ」