異常な事態に。
土方が、沖田君を支えながら。
こちらに、近づいて来た。
『何が起こったのか、分からない』
そんな表情を、二人とも浮かべていた。
―――――と、突然。
大音響が、耳に届く。
どうやら城外から、砲撃を受けた様だ。
2度・・・3度、砲撃音は、続く。
その衝撃で、城の天井から。
瓦礫が、絶える事無く落ちて来る。
このままでは。
お江戸の象徴が。
消滅するのも、時間の問題か。
「チャ・・・・イナ?」
そんな中、沖田君が。
横たわった神楽の。
突き刺さった刃を、凝視し。
眉間に皺を寄せ。
土方から、離れて。
片膝を付けて、神楽を覗き込む。
「お前・・・何、くたばってやがんでェ。
・・・・さっきの、キレた『気迫』は何処に追いやったんだ?」
神楽と対峙した時『夜兎』と、認識していたのだろう。
しかし彼は。
あえてその事を、口には出さない。
声をした方向に、神楽はゆっくりと顔を動かすと。
「――――サド・・・・王子・・・・?お前らしくない、情けない声アルナ」
「・・・・許さねえぜ?オレとの『決着』をつけねえまま――――――」
沖田君の言葉を遮る様に――――――。
神楽は、言葉を発する。
「分かってる・・・・アル。私・・だって、お前との『決着』を着けなきゃ――――」
一呼吸おいて、にっこり微笑み。
「死に・・・・きれねーヨ」
背後で、大きな衝撃音。
それに続く様に至る所で、立ち上る灰色の煙達。
どうやら、城の天井が崩れた様だ。
このままだと、オレ達もマズイ。
「だ・・・・から。とっとと帰って・・・・その怪我、治せヨ」
「はっ。誰の所為で・・・・受けた傷だと、思ってやがんでィ」
そう言うと、苦笑いを浮かべて。
脱力しきっている、神楽の左手を取り。
自分の小指を差し出して。
神楽の小指に、しっかり絡めた。
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