「・・・・簡単に逝くんじゃねえぞ?約束・・・・しやがれ。お前をやんなあ、このオレなんでィ」
名残惜しそうに。
小指が離れたのを、確認すると。
沖田君の背後に控えていた、土方に話しかける。
「――――此処にいたら、マズイ。お前等、とっとと、此処から離れろ」
周囲には。
どんどん瓦礫の山が、出現している。
「お前等はどうす―――――」
土方の声が、したと同時に。
沖田君のいる頭上から、天井が崩れ落ちる。
「あぶねえっ!」
咄嗟に。
彼の身体を右腕で押して。
同時に、オレ等と奴等の間に。
壁が作られる。
「総悟!?」
土方の声が、聞こえ。
沖田君に駆け寄る気配。
間を遮断していた障壁の脇から。
二人の姿が、出現する。
真選組・副長は。
沖田君の身体を支え、瓦礫の間を抜けて。
城を、抜け出そうとしていた。
二人の黒い服を着た男の背中を、見送っていたら。
奴は歩みを止めて、肩越しに振り向き。
「・・・・・先に、行ってる」
それだけ言うと、再び歩き出した。
「銀・・・・ちゃん?」
神楽の方に向き直り。
「どうした?」
「・・・・アイツ・・・・等・・・・は?」
「ああ―――――屯所に、戻るってよ」
それを聞いて、ほっとした表情を浮かべて。
「・・・そ・・・う。サド王子に・・・嘘・・・・ついてしまったアル」
「・・・・・・」
「・・・・も・・・・う――――銀ちゃんの顔が・・・・・」
左手を、ゆっくりと動かして。
何かを、探している様で。
「神楽?」
急いで、その左手を握る。
――――――冷たい。
血を大量に失っている為か。
オレは神楽の身体を、必死で手繰り寄せながら。
体温が奪われない様に、きつく―――――きつく抱き締めた。
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