自分で悩んで悩み抜いて、出した結論がこれ。

『神楽を、自分の元から引き離す』

ずっと時が止まる訳でも無く、年月は流れて。

『ガキ』の皮を被っていた少女が、徐々に『女』に変貌していった。

以前は、気にならなかった言葉や仕草は。

今では些細な事でオレの意識を、否応無しに持っていく。

己の瞳が、神楽を『女』として。

見ている事に気付くのは、そんなに遅くなかった。

このままではいつか・・・・己の『何か』が壊れそうな気がして。

――――恐ろしい結末に、辿り着く前に。

『どうにかしなければ』と。

意を決して大家でもある、ババアの店を訪れ。

何食わぬ顔で、話を持ちかけた。

「アイツが居住出来る場所を、探して欲しい」と。

当然の様にババアは、眉間に皺を寄せ「何故?」と問い返して来た。

――――が。何も言えず沈黙を守っていたら、カウンター越しから溜息が聞こえ。

了承の言葉を得る事が出来た・・・・勿論、金銭面は別だったが。

「あの娘が大人しく、首を縦に振るとは思えない」との、お言葉付きで。

案の定ババアが言った通り、目の前に座る娘は。

納得のいっていない表情を、浮かべている。

まあ・・・・今まで一緒に住んでいたのに、いきなり「出てけ」と言われたのだから。

抗議したい気持ちや、抵抗したい部分もあると思う。

―――――でもな?やっぱりマズイよ。

20歳になる前の娘が、いつまでも野郎と一つ屋根の下なんて。

オレ達別に、血が繋がった兄妹でもねえし。

だからと言って、父娘の関係でもない。

出会った頃のコイツは、まだまだガキんちょで。

自然とオレが、『保護者』的な存在になってただけで。

『家族の様な関係』が築かれてたからこそ、一線が引かれてた訳だけど。

最近己の瞳が神楽を、『家族』としてではなく。

『一人の女』として、見てしまっている事で。

その一線が、邪魔に思えて来たりしてしまう。

けれど・・・・今の関係を、崩してはいけない。

信頼してる男が、突然豹変したと知った時―――――多分神楽は。

奈落の底に、堕ちる感覚を味わうと思うから。

―――――それだけ。「穢れ」を知らないんだよ、コイツは。


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