「・・・・どう・・・・しても?」

今まで見た事の無い、真剣な表情を浮かべる男に向かって。

掠れた声で、途切れがちに言葉を述べる。

「ああ」と、容赦の無い返答。

――――あんだけ、うるさかった鼓動が。

今では大人しくなり・・・・その代わりに。

突き刺さる様な痛みが、襲って来た。

まるで悲痛な声を、上げている様。

「――――箱入りは、『卒業』だ」

そう言うと会話を断ち切る様に、立ち上がって目の前から立ち去る。

一人居間に取り残された私は、無意識に両膝の上に乗せた手を拳に変えた。

次第に身体中が、震え出して。

――――嫌・・・・だ。

『万事屋』から、離れたくない。

銀ちゃんの傍に、ずっといたい。

――――だって・・・・私は。

銀ちゃんの事が、好きだから。

出逢った頃とは違う、さらりと言えちゃう様な『好き』じゃない。

私だって恋の『好き』と、普通の『好き』の区別くらいつくんだヨ。

―――――銀ちゃんを、一人の男性として好きなんだって。

この気持ちに気付いた時は、とても興奮して眠れなかった。

例えガキ扱いされ様が、『仲間』として見て貰えなくても。

万事屋でお互いの時間を共有出来る事が、凄く嬉しくて。

こんな日が続けば良いと――――ずっと願ってた。

ねえ?18になった今でも、私はガキっぽいアルカ?

銀ちゃんに少しでも気に掛けて貰える様、振り向いて貰える様に。

女性らしさを、頑張って身に着けて。

あんなに無頓着だったお洒落や化粧も、一生懸命勉強したんだヨ?

ねえ?銀ちゃん。

私の『ガキ』の肩書きは、いつ取り払って貰えるノ?

いつになれば、銀ちゃんに「女」として見て貰える?

それとも――――このまま、変わらない方が良かった?

そうすればガキとして、銀ちゃんの傍にずっといられた?

「・・・・・・・・」

どれだけ自問自答を重ねても、現状は変わる事は無い。

・・・・一度決めたら、梃子でも曲げない性格だって知ってるから。


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