「・・・・・・・・」
銀ちゃんが此処を後にしてから、もう2時間が経とうとしている。
どうしよう?このまま、彼の帰りを待っているべきか。
戻って来るのを待って、もう一度話しを聞いて貰おうか?
「意味・・・・無いアルナ」
ぽつりと呟いた言葉は、一人きりの室内に響いた。
「ワン」
背後で丸まっていた定春が、起き上がり傍まで移動して来る。
「定春・・・・・」
愛くるしい円らな瞳が、じっと私を写す。
鼻の頭を撫でていたら、自然と口が開いた。
「私・・・・此処にいられなくなってしまったヨ」
「・・・・クウン?」
「もう・・・・お前とも一緒には、いられないネ」
「ワン!ワン!」
どうして?と問い掛けられてる気がして、思わず苦笑いを浮かべた。
「銀ちゃんね、私が此処にいると困るんだって。
もう大人なんだから、一人立ちして欲しいみたいアル・・・・・一人でいる時間が欲しいって」
「ワン」
「確かに・・・・私といた事で、プライベートの時間。あまり無かった気がする」
思い返せばいつも、一緒にいる事が多かった。
仕事は当たり前だけど――――依頼が無かった日は。
銀ちゃん・新八・私、定春。
三人と一匹、連れ添って・・・・楽しい時間を過ごしてた。
――――――けれど。
銀ちゃんにとって、それは束縛された時間だったのかも知れない。
突然・・・・右頬に暖かい感触が、訪れた。
我に返り視線を逸らせば、悲し気な顔をした定春が舌を出している。
「クウン・・・・」
「有難う、定春。慰めてくれて」
・・・・・そうだよネ。
私がずっと傍にいる事によって、銀ちゃんのこれからの人生を。
阻んでしまう・・・・・事にもなるかも知れないんだ。
――――――それに。
どんなに、銀ちゃんの事を想っていても。
彼の私に対する肩書きはきっと、変わらない――――変えて貰えないだろう。