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重い足取りで、己の家に通じる階段を昇る。
懐に手を偲ばせ、受け取った封筒の有無を確かめて。
引き戸に手を掛け、ゆっくりと開けた。
「―――――――――」
・・・・・・が、やけに静かだ。
人の気配を、感じられない。
「神楽?」
ブーツを脱ぎながら、名前を呼ぶも返答が無い。
首を傾げつつ廊下を歩き、居間へと向かった。
―――――その時。
「!?」
突然目の前に、現れた大きな影。
「ワン!ワン!」
「定・・・・・春?何だよ、驚かすんじゃねえっての。んで?お前のご主人様は何処にいんだ?」
オレの問い掛けに応えるかの様に、白く巨大な犬は一吠えすると。
踵を返しテーブルの前まで、4本の足を進め。
右足を机上に乗せ再びこちらを見ると、「ワン」と鳴いた。
「・・・・・・?」
定春の傍まで歩き、乗せられた右足部分に視線を移せば。
テーブル上に、何やら紙が置かれていた。
「何だ?これ」
怪訝に思いつつ、ソレを手に取れば。
見覚えのある文字が、一列に並んでいた。
自然に眉間に皺が寄り、一気に視線を滑らす。
『今まで有難うございました 神楽』
短い文面―――――しかし、瞬時に意図を悟る。
「・・・・・アイツ、出て行ったのか?オレの帰りも待たずに――――」
「ワン」
飼い犬は肯定するかの様に、短く吠える。
「―――――――」
長椅子を避けて、神楽が塒にしていた押入れの前に立ち。
左手で勢い良く、襖を開ける。
敷かれていた布団は綺麗に折り畳まれ。
壁に飾られていた、『ピン子』の色紙も無くなっていた。
「・・・・・神・・・・楽」