置手紙一枚を残して、住み慣れた『万事屋』を後にし。
―――――今、かぶき町内を当てもなく歩いている。
「・・・・・・・・」
これから、どうしようか?
一度は姐御や、新八の顔が浮かんだが。
一日・2日の、泊まりならいざ知らず。
居候となると、話は違ってくる。
「困ったアル・・・・・」
―――――独り言を、呟いた時だった。
背後から聞き慣れた声が、両耳に届く。
「・・・・リーダー?リーダーではないか?」
この声は。
肩越しに振り向けば、案の定・・・・長髪の男が怪訝な顔して突っ立ている。
『何してる?』と表記されたプラカードを、高々と掲げる謎の生物も一緒だ。
「ヅラ・・・・エリー」
私は小声で、人物の名前を口にした。
「ヅラではない、桂だ。一人なのか?銀時とあのメガネ少年は、一緒ではないのか?」
珍しいなと言った表情で、問い掛けて来る。
とりあえず頷くも―――――何と返答すれば良いか分からない。
「・・・・・・・・・」
無言のままの私を、見つめたヅラは。
「ふむ」と頷くと、「飯でも一緒に食わんか?」と尋ねてきた。
「え?」
「うまい店を、知っていてな。これから其処に向かおうと思っていたのだ」
私の返事を待たず、ヅラは歩を進めて行く。
エリーもその後を追うように、歩き始めた。
どんどん遠ざかる、二人の背中。
それを追う様に―――――無意識に動き出す、二本の足。
今はヅラ達に頼る以外、行動が見つからない。
「・・・・・・・・・・」
変に・・・・思ってるだろうナ――――すぐ様、答えれなかった私を。
「着いたぞ、リーダー」
前方から声を掛けられ、我に返り顔を上げれば。
年代を感じさせる、少し古びた店が見えた。
『北斗心軒』と書かれた暖簾が、風に煽られ上下に動いている。
ヅラは右手で暖簾を避け、引き戸に手を掛けた。
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