『万事屋』を後にしたオレが、真っ先に向かった場所。

「――――あれ?銀さん、どうしたんですか?急に」

玄関の引き戸を開け、出迎えた人物は――――もう一人の従業員、新八だった。

何て返答しようか、考えあぐねいていたら。

オレの様子を察知したのか、「とりあえず、中へどうぞ」と通してくれる。

「・・・・・ん、ああ」

玄関に通され、無意識に探している人物の靴を探すも。

アイツがいつも愛用していた、チャイナ靴は見当たらない。

・・・・・此処には・・・・いねえか。

「銀さん?」

「・・・・・わりぃ、新八。やっぱいいわ」

そう言って、今来た路を戻ろうと踵を返す。

「え?ちょっ・・・・銀さん?」

背後から戸惑いの声を受けるが、敢えてそれを無視した。

志村家にいないとなると、他の場所を当たらねばならない。

門を潜り一旦、両足を止める。

―――――アイツが、佇んでいそうな場所は。

定春と良く行く、『公園』か『河川敷』辺りか。

気付けば足元の影も、長く伸びていた。

無意識に空を仰げば、形を歪ませた橙色の夕日。

とにかく行きつけの、公園を目指すとしよう。

「・・・・・・・・・」

このままだと――――夜に、突入しちまうなあ。

アイツがガキの頃はガキの頃で、心配しなけりゃならなかった。

『保護者』としての、責任てのもあったし。

もし神楽に何かあったら・・・・あの禿げ親父に、オレが殺される羽目になるしね?

だが・・・・今の神楽も神楽で、悩みの種になる。

十中八九、男共は放っておかないだろう。

アイツは、自覚無しだろうが―――――。

「・・・・変貌・・・・しすぎなんだよ」

思わず、独り言が口から出て来てしまう。

・・・・だが、そんなオレも。

他の野郎共と、考えは同じ―――――なんだよな。

そう、だからこそ。

アイツを『大切』だと、思ってるからこそ。

オレの元にいては、いけないんだ。



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