「・・・・・・・・」

――――目的地に辿り着き、視線を至る所に巡らすも。

時間帯もあるのか、目に入る人影も疎らで

ガキ共の姿はなく、のんびり散歩やジョギングをしている大人達だけ。

しかし・・・・神楽の姿は、見当たらない。

「・・・・こんな事なら、定春連れてくりゃあ良かったなあ」

あの巨大犬なら、神楽の匂いを覚えてる筈だから。

ひょっとしたら、すぐに見つけたかも知れない。

――――ババアの簪の件で、その能力は実証済みだったのに。

「ちっ」と舌打ちをしつつ、今更ながら悔やんだ。

此処に来るまでに、河川敷も捜索してみたが。

家路に向かう人々と、すれ違っただけだった。

右手を腰に当てて、左手で己の髪を掻きつつ溜息。

「・・・・しゃあねえ。一度万事屋に戻るか」

オレの行動だけじゃ、範囲も狭まるし。

無理にでも、定春を連れてくしかねえ。

考えを新たにし、公園の入り口を目指し歩く。

――――――と。

丁度見慣れた黒い制服を着た人物が、2人視界に映る。

・・・・土方の野郎と、沖田君か。

今此処を歩いていると言う事は、巡察中なのかも知れない。

もしかしたら、神楽を見掛けてる可能性もある。

あまり気乗りしねえが・・・・・聞いてみる価値はあるか。

「お?」と言った表情を浮かべて、沖田君がこちらに気付いた。

右の肘で上司を突く。

眉間に皺を寄せ口を開こうとした、土方が沖田君の視線を追う。

―――――瞬間、数倍の皺が眉間に寄った。

「旦那じゃねえですかィ。こんな所で、珍しいですねェ」

「よお。精が出るね、沖田君。・・・・つうか、てめ。
ニコマヨ。善良な市民に、そんな表情向けて良いと思ってんの?訴えられるよ?」

「放っておけ、元々こういう顔なんだよ。
てか――――誰が、善良な市民だ?ニコマヨって何だ!?名前感覚で呼びやがって!」

口に咥えた煙草を噛み潰し、怒りを露にする土方に対し。

「嫌だなァ、分かんねえんですかィ?ニコチンマヨラーの略じゃねえですか」

沖田君が何を今更と言う態で、両目を瞑り溜息を吐く。

―――――何だか・・・・無駄な時間を、過ごしそうな気配だなあ?おい。



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