土方の野郎と、沖田君の漫才をいつまでも見てる暇は無い。

とりあえず用意していた質問を、二人にぶつけてみた。

「――――あ?チャイナ娘?」

新しいタバコを口に咥えたと思ったら、反対に質問を返して来る。

・・・・・こいつ等も、見掛けてねえようだなあ。

「沖田君は?」の意味を込めて、視線を向けたが。

案の定彼も首を左右に振り、「見てませんぜ」とだけ答えた。

どうやら街中を、うろついてる訳でもねえらしい。

――――とすると・・・・アイツ、一体何処にいやがんだ?

胸中には不安と、苛立ちが湧き上がる。

「・・・・・・・・・」

こりゃあ、のんびりしてる場合じゃねえな。

「――――チャイナに、何かあったんですかィ?」

態度に出ていたのか、沖田君が怪訝な表情を浮かべて問い掛けてきた。

「―――――いや」

言葉を濁し、返答したら――――土方が紫煙を吐き出しながら、口を挟む。

「・・・・まだ、18時くらいじゃねえか。あの娘だって、もうガキじゃねえし。
今時の時間をぶらついてたって、何ら問題ねえだろ?過保護過ぎるのも、どうかと思うぜ」

言いたい事言ってくれちゃってけど―――――過保護とか、そういう問題じゃねえんだよ。

「・・・・・・・・」

「まあ・・・・まだオレ等、巡察中ですし。
見掛けたら、旦那が探してたって伝えときまさァ。さあ、行きますぜ?ニコマヨ野郎」

踵を返し自分の上司を呼びながら、歩を進めていく沖田君。

「てんめえ!総悟!名前感覚で、呼ぶんじゃねえ!!オレは土方だ!」

「うるせえなあ。
ニコチンとコレステロールの過剰摂取で、とっととくたばっちまって下せェ。
何ならそのタバコ、全部咥えて吸ったらどうです?」

「―――てめえの指図なんざ、死んでも受けるかああああ!待ちやがれ!総悟おおおお!」

騒がしい空気をばら撒きながら、遠ざかる黒い制服姿の二人組。

オレはその姿を横目で見やり、深々と溜息を吐くと。

今までの時間を取り戻すかの様に、急ぎ足で己の家へと両足を動かす。

頭上を仰げば夕日は姿を消し、恒星達が己の存在を強調し始める。

慣れた路を歩みながら――――視線を至る所へ、巡らして。

何度も打ち消そうとしては、脳裏に現れる呆然とした神楽の表情が。

まるで心臓を抉る様に、痛みを連れて来た。

ああ―――――いっその事、本当に血の繋がった兄妹だったら良かったんだ。

そうすればアイツに対する、こんな邪な想いもなかったのに。



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