「―――――――――」

あ〜・・・・何か、頭がグルグルするアル。

けどこの浮揚感は、気持ち良いかも。

そうか・・・・これが――――アルコールの力。

「神楽ちゃん、さっきから―――銀さんの、愚痴ばっかりだね」

視界が定まらずとも、笑い声が混じった言葉の方向に顔を上げて。

「あ〜んなマダオでぐーたらな侍、コッチから願い下げネ!
私を追い出した事によって、後悔しまくる事間違いなしヨ!
頭下げて来たって、戻ってやらねーアル!」

カウンターにうつ伏し、グラスを握る。

「・・・・・銀さんの事、好きなんだ?」

静かに呟かれた言葉だけど――――私の両耳に深く届いた。

「・・・・・・・・・・・」

「黙ってるって事は、肯定?――――だろ?」

―――――そう・・・・好きだヨ。

「でも・・・・私が、銀ちゃんを好きになったって。
あの男は、私の事を何と思ってないネ。ただの『クソガキ』としか見てないアル。
大人の女性が、好きなのヨ」

どんなに、綺麗に着飾っても。

どんなに、お化粧に力入れても。

どんなに、女性らしくしても。

――――――振り向いて貰える事は、無い。

「じゃあさ、銀さんの好みのタイプってどんな?」

「ボン・キュ・ボンの、スタイルの良い―――――美人」

「・・・・神楽ちゃんだって、そうじゃない」

「―――――違う・・・・私じゃ・・・・ダメ」

そう。

結野アナみたいな、ああいうタイプ。

それだからって・・・・訳じゃないけど。

二つにしていたお団子を止めて、肩まであった髪を短く切ってみたり。

慣れ親しんだ髪型を、変えるって――――結構勇気いった。

何度も美容院を訪れては、引き返した記憶が懐かしい。

金属音を鳴らし刈られ、束となって床に落ちる髪達。

全体的に涼しくなった私を、美容師は「とてもお似合いです」と褒めてくれた。

鏡の前で違った自分を見つめ、脳裏に銀ちゃんを思い浮かべながら。

私のこの姿を見て、何て口にするだろうと期待と不安が湧き上がって。

『万事屋』への路を、緊張しながら戻ったんだ。

――――『似合う』の一言が、貰いたくて。



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