ようやっと我が家の前に辿り着き――――階段に足を掛けようとした時。
背後から、「銀時」と声を掛けられる。
「?」
この声はと思いながらも、肩越しに振り向けば。
普段とは違うオーラを醸し出し、眉間に皺を寄せたヅラがエリーを従えて佇んでいた。
気にならないと言えば嘘になるが、正直それ所ではない。
「――――何だよ。悪いけど、オレ今忙しいんだよ」
それだけ言うと背を向けて、段を昇ろうと体重を乗せる。
「リーダーを、探してるのか?」
「―――――――?」
何でコイツが、そんな事知ってんだ?
咄嗟に振り返り、奴の表情を拝む。
どうやらはったりで、今の言葉を紡いだ訳では無いらしい。
――――――と言う事は。
「ヅラ!お前、神楽に会ったんか!?」
思わず両襟首を掴んで、意気込む。
「ヅラではない、桂だ。・・・・昼頃、リーダーを見掛けた」
「何処にいた!?んで、どっち方面に行った!?」
ヅラは襟首を掴んでいた、オレの両手を離しながら。
「――――何をそんなに、慌てている?これで良かったのではないのか?」
「―――――――」
「『一人の時間』が、欲しかったのだろう?」
奴の口から、淡々と語られるオレが発した言葉。
「・・・・お前。神楽から、何か聞いたのか?」
「――――たまたま。様子がおかしかったので、訳を聞いただけだ。
随分とショックを受けてる様だったが」
「・・・・・・・・・」
無言でいると、再び「銀時」と名前を呼ばれる。
「―――――お前本当に、リーダーと共にいる時間が嫌になったのか?」
「何で・・・・そんな事、聞くんだよ?」
「突き放す態度が、不思議でならん。
それでなくとも、リーダーに対しては目に余る程の過保護ぶりだったのに。
別の理由で、彼女を自分から離したかったのでは無いのか?」
・・・・・普段は阿呆な癖して、こういう時だけ勘を働かせやがって。
「別に、理由なんかねえよ。アイツだって、もう大人だろーが。
一人立ちしたって、おかしくねえだろ。
それに年頃の娘が、いつまでも大の男と一つ屋根の下ってのは、世間体にもマズイし」
ヅラに向かって今日何度目かの、台詞を口にした。
しかし奴は何も言わず、オレの顔を見つめ。
「・・・・相変わらず、不器用な奴だ」
そう静かに言葉を残し、エリザベスを連れて踵を返そうとする。
「――――おい!ちょっ――――――」
神楽の手掛かりを、再度問おうとしたのだが。
ヅラはオレの声に振り向きもせず、エリザベスを連れて。
その場から、立ち去って行く。
「不器用・・・・って・・・・うるせえよ。コンチクショー」
下唇を噛み、両拳を強く握り締め。
悔し交じりの言葉を、遠ざかる長髪の背中にぶつけた。
→NEXT
←BACK
小説トップページへ戻る