「銀ちゃんが、私の髪型を見て言った台詞は――――」

「うんうん」

彼女は厨房から移動すると私の隣に腰掛け、カウンターに両肘を乗せ相槌を繰り返す。

「『何でショート?』の一言だったネ!チキショー!切っちまった髪、返せやー!」

「それで―――また、伸ばしてんだ?」

幾松姐の左手が、私の頭を軽く撫で始めた。

「・・・・もう二度と、ショートヘアなんかしないアル」

「銀さん、実は照れてたんじゃないの?」

「――――そんな訳ないネ。鼻穿りながら、死んだ魚の瞳でさらっと一言ヨ。
これがきっと結野アナだったら、めっさ褒めまくってる筈アル」

そう考えると自分が今まで頑張って来た事が、無性に腹立って来た。

いっその事あんな男・・・・嫌いになれたら良いのに。

「・・・・・・・・・」

『もっと世間に目を向けろ』

銀ちゃんの言う様に、もっと世間に目を向けるべきなのかな?

今まで私の世界は、『銀ちゃん』一色だったけど。

あのマダオ侍から離れる事で違った何かが、見つけられるだろうか?

「―――――どしたの?」

突然黙った私を不審に思ったのか、幾松姐の手が止まり顔を覗き込んで来る。

「・・・・・私。万事屋、辞めるネ」

「え!?急に、どして!?」

私の放った言葉に、驚きを込めた返答が戻って来た。

「銀ちゃんの言うとおり・・・・ずっと一緒に、いすぎたのかも知れない」

「・・・・・・・・・」

「いつまでも、背中におんぶする訳にもいかないアル。
きっと――――それが、銀ちゃんにとっては、重荷だったのかも」

なんだかんだ言って、あのマダオ侍は優しい。

ずっと言いたかった事を口に出来ず、今日まで我慢してくれてたのかも知れない。

「神楽ちゃん・・・・・」

心配そうな表情を浮かべる、幾松姐に向かって笑顔を向けた。

「―――――大丈夫ヨ。私がいなくなっても、万事屋には新八と定春もいるし」

「――――――――――」

「ごめんネ、幾松姐。今晩だけ、泊めて欲しいアル」

「それは別に、全然構わないけど――――――」

まだ何か言いたそうに言葉を続けようとしたが、私は敢えてそれを遮った。

「アリガト」


→NEXT

←BACK

小説トップページへ戻る